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『浸水する関係』

 シャワー室に充満する香り。それは紛れも無く園田に染み付いている匂い。  幾度と無く身体を重ねて覚えてしまった園田の香り。  ゾクリ……と身体が反応する。  抱かれる時に、近づいた時に香る。全身を包むように香りに巻かれて、反応しないはずが無い。香りと快楽は直結している。  シャワー室の外には脱衣所を隔たれているとはいえ、園田がいる。 「……ん……」  シャワーを流したまま、自身に手を添えた。  シャワーに温められた室内で香りは更に強くなる。温まった身体からもその香りがする。まるで抱き締められているかのように。  上下に擦りあげながら唇を噛み締める。  片手を壁につく。荒い息はシャワーの音がかき消してくれる。聞こえるのはシャワーの音だけ。  そして、頭の中にあるのは……『もっと声出せよ』という園田。 『しっかり足、支えてろ』 『もっとかよ?』 「……はっ……あ……」 『欲しいって……言ってみ?』 「…………」  シャワーのお湯と共に流されていくソレに嫌悪感を感じた。  摺りかえられていく快楽。  追い詰められていく現実。  園田の選択は僕を捕らえていく。  この香りに僕は囚われている。  園田に……囚われている。  気がついて愕然とした。  僕は園田にとってのセックスフレンドだ。  そして、副寮長としてここに囚われたんだと。  僕は……逃げられない。

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