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『浸水する関係』

 午前中に片づけをして、昼食後に部屋を移動してきた。明日は日曜日。月曜日からはここから登校する。園田にまだ聞いてはいないけど、月曜の朝には寮長会があるのだろうか。  基本的な寮での時間は同じはずだ。9月中旬。いくら山の中の学校とはいえ、引越しするのには汗をかいた。 「シャワーでも浴びてから片付けしようかな……」  ベッドから起き上がって着替えを箱から取り出すと部屋を出た。  園田はリビングのソファーに寝転んで雑誌を捲っていた。 「汗かいたからシャワー浴びるよ」  声をかけてからシャワー室の扉を開ける。  中から鍵をかけて服を脱ぐと頭から熱いシャワーをかぶった。そしてシャンプーを取ろうと手を伸ばして気が付いた。  自分のシャンプーはまだ片付けていないダンボールの中だったことに。  勝手に園田を使っていいのかも分からない。並べられたヘアサロンのシャンプーとトリートメント。こだわりがあるのは一目瞭然だ。  バスタオルは学校から支給されている。棚の中からそのタオルを取ると、ずぶ濡れのままシャワー室から顔だけを出した。 「園田……」  まだソファーに座っていた園田が振り返った。 「あのさ、シャンプー貸して。まだ出してなかったから」 「……ああ。別に、いくらでも……」  園田は歯切れの悪い返事をすると、何かを呟いたけどそれは聞こえなかった。シャワー室に戻ってシャンプーして、身体を洗って……気が付いて後悔した。  一度服を着てでも自分のシャンプーを取りに行けばよかったと。

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