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『新地と譲歩』

 シャワーを浴びて出てくると園田は起き上がって、「夕飯ん時に寮長会やるからな」と呼び止められた。 「寮長会って朝やるんじゃないの?」 「うちでは夜。夕食の時か、その後にやるんだよ。朝は忙しいだろ」 「場所はここ?」 「食堂。夕飯食べながらやることも多いし、どうせ食堂にみんな集まんだから一石二鳥だろ。その後点呼して解散だ」 「点呼は全員?」 「いや。総務の誠(マコト)の仕事。部屋にいないやつがいたら報告に来ることもあるけど、大半は誠が処理してる」  寮生は全員が生徒手帳を常に携帯している。それが部屋の鍵になっているからだ。その鍵の施錠状況によってその生徒が部屋にいるかどうかは寮監室でチェックできるシステムになっている。外泊は長期で無い限りはこの寮監に届け出ることになっていて、その届けを総務が把握しているのだ。  だから、総務の誠が一挙に引き受けているのは都合がいい。 「副寮長は仕事が少なそうだね」 「そうだな。お前の仕事は毎朝寮生にその麗しい顔でも見せて、志気を上げることだ」 「ふふ。そんなの簡単だね」  僕は笑って首を傾げると園田に笑いかけた。  そう、色気を漂わせて。 「せいぜい襲われない様に自分の身は守っとけよ」 「守ってくれないんだ?」 「何だ。守って欲しいのかよ」  園田は起き上がって下から睨みつけてくる。 「意外と冷たいんだなと思って。僕はまだここに来たばかりなのに、守ってもらえないんだと思って」 「自分の身ぐらい自分で守れ。襲われるのが嫌だった部屋に篭ってろ。女王様」

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