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『エピローグ』
「ほら、僕のネクタイ結んで」
首にかけたまま結んでいないネクタイ。毎朝一臣が結んでくれていた。
それは周りの生徒たちも知っている。
「俺が?」
「何? 一臣に結ばせてもいいの?」
さらにざわつき出す生徒たち。チラチラとこっちを気にしながら通り過ぎていく者。振り返ってあからさまに見て行く者。
うん。見ていけばいいよ。
だって……。
「テツは僕のものなんだから」
口端を上げて笑う。園田は僕の意図を察したのか、同じように意地悪く笑うと、「女王様には叶わないなぁ」と呟いて肩膝を床に付けて、ネクタイに手を伸ばした。
「アズ……俺の女王様」
器用にネクタイを結ぶとそう呟いてネクタイの先にキスをした。
どちらかに身を固める。元々どっちでもない。最初から園田しか見ていなかった。
恋を育てて、育んで、僕は愛を手に入れた。
聞けない愛の睦言を、知らない愛の営みを、全てあなたに捧げて。
「僕は、テツだけの女王様だから」
傅いたまま園田は、「愛してる」と呟いた。
全校集会では一臣が喋り出した。愛しい恋人の為に。
騒がしい日々がまた始まり、恋が囁かれる。
それを聞き逃さないように、溢してしまわないように僕は、傅いた園田の首に両腕を回し、周りに聞こえないように、「満足させて」と呟いた。
(おわり)
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