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第6話

文化祭の催し物が決定した次の日は、私はいつもより機嫌がよいのです。 その理由は、 (……今日は雨です) 天気は朝から雨でした。 ……雨の日は、いつもの私と違います。 あのときと違う天気、晴れていないからです。 「叶さん、おはようございます!」 「おはようございます」 私は笑顔で返しました。 (ですがこれはいつものことです) 雨粒が傘に落ちる音は嫌いじゃないです。 むしろ『好き』だからこそ、私の心の心も雨の音に乗ります。 「あ」 「杉原先輩だ」 ふと、自然に耳しにた言葉に私はらしくもなく反応してしまいました。 あの人は昨日の隣の席の男子が言っていた先輩でしょう。 (……傘、さしていないです) 雨なのに。 濡れてました。 黒、紺、青、透明等の傘の中で、傘を指していない杉原先輩という人はびっしょりと濡れていました。 「……」 私は遠目で見ていたら、他の生徒がその杉原先輩に声をかけていました。 「杉原、お前何で傘さしてないんだよ?」 「んー?彼女ん家に傘置きっぱなしで、取りに行ってなかったりして?」 「なんで疑問系で返すんだよ……」 とても言葉に重みがなさそうな口調です。 説得力のない、……私が虐めを受けていた中学のときのことを思い出しました。 (……ですが嫌じゃないのは何故でしょう) 「馬鹿だよな、お前……」 とても仲の良さそうな会話に、つい聞き入ってしまいました。 私にはとっては違いすぎる世界のように聞こえます。 「水も滴るいい男デショ?」 「馬鹿だな、お前はホントに馬鹿だ」 「でもお前実際イケメンだし、言い返せないから無性に腹が立つ」 黒い長めの前髪をかき上げてる『杉原先輩』はどんな人なのでしょう。 長身のその先輩が見てみたくなってしまった私は、つい行動に出てしまっていました。 気が付いた時には……私は杉原先輩の制服の裾を引っ張っていました。 「あ」 「……えっ?!」 まさか自分がこんな興味本意で行動をしてしまうなんて思いもしませんでした……。 私はさしている傘を肩に乗せて鞄から折り畳み傘を取り出しました。 「杉原先輩……ですよね?私予備に折り畳み傘を持っているんで、良かったら使いますか?」 私とは全く外見の違う生粋の日本の顔付きなのに思っていたよりもスラリとした長身。 前髪を掻き上げている杉原先輩を見ていた私は、なんとも言えない表情をしていたと思います。 (……突き返されるのでしょうか?) それくらいの間の後に杉原先輩は、困ったような笑顔で、 「優しいね。それじゃあ……遠慮なく借りるよ?」 その笑顔は何故か何処かで見たような感じの表情でした。 「あんがとね、笹倉 叶ちゃん」 何故、杉原先輩は私の名前を知っているのでしょうか、それが不思議でした。 雨の日の登校中に、私は杉原先輩と初めて接触しました。 今まで受け身だった私が、初めて興味を持った人は『杉原先輩』でした。

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