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第21話

向かった三年生の階は少しだけ、他の階より何か違っているように感じました。 (………) あの日を思い出して、私は少しだけ……いえ、かなり怖くなっていました。 せめて雨の日でしたら……。 歩いてはいますけど……気持ちが進まないまま歩いていると、先輩は少しだけ振り返って、 「大丈夫だよ」 杉原先輩は私を落ち着かせてくれるように優しく笑ってくれています。 それだけで少しは気が楽になった気がしましたが、私は完全には拭いきれませんでした。 杉原先輩のクラス三年二組の教室に思い切り勇気を振り絞って一歩入ります……。 「笹倉さん、笹倉を呼んできました」 (……嫌な空気です……) 私は今にも逃げ出したい気持ちでいっぱいになります。 そんな気持ちは知ってるはずがない杉原先輩は、スッ……と私の前に出てくれました。 「お待たせしましたご主人様、一年六組の執事を連れて参りました」 (……はぃ?) あ、そうでした、よく考えてみたら私は今執事です……!! お父さんとはいえ、私も何か執事らしいことしないといけません。 内心でも焦っていました。 なので、いざお父さんの前に出てしまったら、何も出来なくて……恥ずかしさが込み上げてきてしまいました。 (っど……どうしたらいいのか分からないです……) 何も行動にも出せないで立ち尽くしていました。 ……こんな格好でもありますし、顔も上げられず、とにかく恥ずかしくて、目を合わせられませんでした。 すると、お父さんは、 「っ……アッハッハッハ……!!」 ……まぁそうですよね。 笑えますよね、私らしくなくて。 「面白いぞ、叶」 「……」 ですが、滅多に笑わないお父さんがこんな反応をするのが、私にとって新鮮でした。 「何でも完璧にこなしてきたお前でも、行動にも移せないこともあるんだな!!」 今更ですが、きちんとお父さんを見ると気を使ってくれたのでしょう、背広ではあるのですがネクタイを外して、Yシャツのボタンを2つ外してくれていました。 「……」 お父さんの隣には、秘書の谷口さんまで連れているのに。 「ですから……あまり笑わないでください」 何だか笑い者にされているのが中学の虐めを彷彿と甦ってくる気がしていました。 「笑わずにはいられるか!谷口、カメラだ」 「はい」 すると、秘書の谷口さんはデジタルカメラを取り出した瞬間、私は固まってしまいました。 ……カメラ……?

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