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第33話

「……杉原先輩?」 あの日以来の、今日また傘をささずに雨に濡れてる杉原先輩を見付けてしまいました。 「おはよ、叶」 最近呼んでくれるときの口調ですが、明らかに分かる『何時もと違う』杉原先輩でした。 ……口元にキズがありました。 「……」 「叶?」 「どうしたんですか、……その口元のキズ」 「男の勲章!!」 「喧嘩を払ったんですか?」 『あははっ』と杉原先輩は声に出して笑いました。 「払ったらもっと大変なことになってるよ」 次の瞬間には、あの困ったような笑顔です。 先輩は何か雨に濡れたいことがあったのでしょうか……? 「先輩」 「ガッコ行こ?」 (……やはり、雨に濡れたいことがあったんですよね) 何故か今日は私に誰も声をかけてこきません。 朝早いですし疎らとはいえ生徒はいます。 文化祭二日目なのに、何故でしょうか? (……) 今日の先輩はとても違和感があったのですが、直球に聞いても答えてくれない気がしていました。 ですから私は、『あること』を言葉にしたいと思います。 今の私には、少しだけ勇気のいることでした。 ですが、やはり知りたかったんです。 「杉原先輩」 「ん?」 「付き合ってくれますよね」 「……ツレション?」 やはり……聞いたんですよね。 杉原 俊先輩の義弟、私を虐めていたリーダー格の『杉原 亮』に……。 「いいですよ……先輩の好きなところに。ツレションでもどこでも」 「叶、ごめん」 「私は杉原 俊先輩が憎いわけではないですし、恐いわけでもないです」 『それにこれは先輩が謝ることではないですから……』と私は付け足しました。 「叶は虐めの加害者の義兄弟は怖くないんだ」 先輩は真剣な表情でした。 なので、尚更私も真剣に思いを伝えなければならないと思いました。 「加害者の関係者は全員罪人なんですか?」 先輩は間を少しだけ空けてから、 「……違うけど関係はある。」 そう答えてくれました。 「そうですよね。違うんですから先輩が謝らないでください」 「でも、謝らないといけないこともあるんだ」 謝らないといけないこと……ですか? 「それは場所変えてから話すよ」 「……」 私は少しだけ考えました。 (……もしかしたら、この雨は私の汚いところを洗い直してくれるのかも知れません……) そして、私はさしていた傘を閉じました。 「……叶?」 「何ですか?」 「風邪引くんじゃないの?」 「私は結構丈夫なんです」 「昨日倒れたのに?」 あれは、精神的なものなのです。 「まわりが過保護すぎるんです」 『笹倉』という名前があるから。 最近は、それが何だか窮屈で仕方がないんです。 雨は今まで傘をさして歩くのが好きだったのですが、雨粒に当たっていた方が良かったときもあったのかもしれません。 「雨って、気持ちがいいですね」 私は雨の中で深呼吸しました。 「雨はキモチイイの、叶もようやく気付いた?」 前髪をかき上げながら笑顔でそう言ってくれました。 杉原先輩は何時もの杉原先輩に戻っていました。 私はそれを感じて、ようやく安心できたんです。 学校に着いたとき、下着まで濡れてしまっていたのには……流石に気持ち悪くなりました。

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