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第49話

「叶は本当に、後夜祭の映画が見たかったわけ?」 「……?そうですね、映画はたまにDVDを家で観るくらいなので、大きなスクリーンで映画が見たいです」 私は素直に答えたのに先輩は、 「とか言ってるけど、自宅にそういう設備くらいあるんじゃないの?お屋敷だし」 『スクリーンとかありそう』と笑ってますが、そんなものがあるわけがありません。 私は真面目に答えました。 「いえ、私の家は豪邸のような『綺麗』な家ではないんです。元々祖母の持ち家で、どちらかというと『古い洋館』みたいな家でしょうか?」 私がそう説明すると、先輩に間が出来てしまいました。 「……そうなんだ?金持ちってみんなそんなもんだと思ってた」 先輩は笑っています。 何か私は変なことを言ったのでしょうか? 「じゃあさ、明後日は一緒に映画でも観に行く?」 「えっ?!連れていってくださるのでしたら、是非行きたいです!!連れて行ってください!!」 先輩のそのお誘いが嬉しくて、私は即答していました。 純粋に映画を観に行けるのも嬉しいですが、杉原先輩と出掛けられるのも嬉しかったんです。 先輩は浮かれている私にビシッと付け加えました。 「そう。なら明後日は、叶は俺とデートだからね?」 『遊びにいくわけだけど、ただの遊びじゃないよ。勘違いしないでね?』と、付け足されました。 「デート……ですか?」 「でも、あくまで一般庶民のデートだからね!!」 「はいっ!!」 私は勢いに負けて返事をしました。 しかし次の瞬間、私はとんでもないことに気付きました。 私は友達と出掛けた経験がないので、どんな服を着ていけば良いのか分からなかったんです。 杉原先輩と映画に行くことに楽しみでしたが、私はデートの前に友達と出かけた経験もないので、本当に困っていました。 (よく考えてみたら、私はフォーマルと制服と部屋着とパジャマくらいしか持っていないです) それに相談出来る相手もいなくて、結局杉原先輩に頼ってしまうわけなんです。 「あの、先輩。そのデートについて教えていただきたいことがあるんですけど……」 私が先輩を見上げながらそう言うと、 「うん、いいよ。じゃあ明日の朝は少し早めに叶ん家の前に迎えに行くから」 と、優しい返事を返してくれました。

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