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第60話
リビングに入ると、落ち着かない様子で辺りをを見回す杉原先輩がいました。
「あ、おはよ叶。楽しみすぎて早く来過ぎちゃった」
と困った笑顔で笑う先輩は少しだけ普段の表情よりも素敵でした。
「……」
「やっぱり可愛い、叶は可愛い服が似合うね。……俺の目には狂いはない」
先輩が私を誉めてくれてるのに、その本人である私は呆然としてしまいました。
「……」
「叶……?どした」
……いけません!!
私は制服姿でもジャージでもない杉原先輩が目の前にいることが新鮮で、……つい反応が出来なくなっていました。
「おっおおおおはようございます!!……杉原先輩」
「うん、いつもより新鮮な反応!!イイね」
やっと私が言葉を発したら、先輩はとても優しい笑顔になりました。
余裕のある先輩が本当に羨ましいと思いました。
たった二歳年が離れているだけで、こうも違うなんて……神様はずるいです。
先輩の私服は本当に大人でした。
赤のチェックの胸元が開いたシャツから見えてるタンクトップかTシャツは黒、上着でしょうか?
モコモコのベストを着ていました。
開いた胸元にはネックレス。
洋服の種類が全く違う感じですが、本当に同じメーカーなんですか?
「……先輩は何か急に大人になっちゃいましたね」
「誉めてるの?それとも老けたって言いたいのかな?」
とても不満そうです。
「正直に言うと驚いてます。……いつもと違う杉原先輩が見れて嬉しいです」
本当に思ったことを言葉にしたら、先輩はとても満足そうな笑顔になってくれました。
「そう?じゃ、褒め言葉にしておくね」
(また、可愛いって言われました……)
今更反芻したって遅いのに、私はしてしまいました。
男として、これは喜んで良いのでしょうか?
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