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第83話
「改まってどした、叶?」
「私、杉原先輩に甘えてます。刺激が欲しいとか我儘を言ってますし、世間知らずです。それに抜けてるますし、ひ弱ですし、すぐ悩みますし落ち込みます……。あと結構女々しいです」
先輩は慌てたみたいに、お湯を被って泡を流しながら、
「ちょっとちょっと叶!!」
「杉原先輩が注意してくれたことも聞けないです。先輩がいてくれなかったら、私はもっと流されてました」
「叶はそんなに弱くないよ?」
「そうやって慰めてくれなくても大丈夫です。それは本当のことですから」
(嫌です……私。また泣きそうになってます)
それでも言わなきゃいけません。
言わなきゃ伝わらない、そう思ったので必死に堪えました。
「先輩が勇気を持って『好き』って伝えてくれたのに、私は逃げてばかりで『特別』なんて曖昧な言葉を使って逃げて甘えてばかりです。……私は曖昧なのに、先輩が私を『好き』じゃなくなるかもしれない。そう思うと……とても怖くなって更に逃げてました」
そう私はいつだって曖昧でした。
『多分』という言葉を使って『絶対』なんて使えませんでした。
いつか変わってしまったら『裏切った』と思われてしまうかもしれないからです。
ですがそれは逃げているだけで……自分の気持ちにも、先輩の気持ちにも向き合っていませんでした。
「でも、先輩は私が『求めたらいつでもくれる』って言ってくれましたよね……?」
「言ったよ」
杉原先輩の声は優くて。
ですから、私は怖くないですし……きちんと言えます。
「私も先輩が『求めてくれたらいつでもあげます』。杉原先輩が欲しいと思ってくれるのでしたら」
私は息を整えてから、先輩と向き合いました。
「私も杉原先輩と同じ気持ちです。私は……杉原 俊先輩が心の底から『好き』です」
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