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第1話
鍛え抜かれ、見事に日焼けした肉体が淫靡な朱に染まっている。盛り上がった胸筋の先に、ぷっくりと膨らんで色づく箇所を自らの指でこねくりながら、ラウール・ダドアは息を弾ませていた。
一糸まとわぬ姿でクッションを腰にあてがい、イスの手すりに足をかけて大股を開いている。脚の間には隆々と欲の証が天を向いてそびえており、先端からはとめどなく透明な液が湧き出ていた。怒張する幹を伝って流れ落ちるそれは、下生えをしとどに濡らしていた。窓から差し込む明るい陽射しを含んで、テラテラと輝いている根元の奥には、たっぷりと蜜を含んだ袋が揺れている。漆黒の草の合間に見え隠れするそれを、秀麗な顔立ちの青年がうっとりと眺めていた。
「ああ……すばらしい……ラウール様。さすがは竜を退治した愛国の騎士。体の使い方をよくご存じですね。こんなにも早く、己の肉体を欲に従順に鍛え上げられるなんて」
艶やかに瞳を光らせる青年、ミクリア・アドモフは白磁のようになめらかな頬に、興奮を浮かべて熱心にラウールを見つめている。まだ少年のあどけなさを残す頬は、情欲を含んだ笑みに彩られていた。
「っ、は……ぁ、んぅ、う」
胸の刺激だけで己を高めるラウールは、切れ長の目を細めて美麗なミクリアの姿に彼の母親の姿を重ねた。
(ああ……ジーヌ様)
女性の名をつぶやいた胸が、熱に焦がれる。自分の役目は終わったとばかりに、まだ三十代前半という若さで栄達を切り捨てて、ひとりひっそりと暮らすと決めたのは、彼女の愛する王国を守るためだった。
「何を考えているのですか、ラウール様」
窓から差し込む光を、ミクリアのやわらかな金色の髪が弾いている。なんて美しいのかと、ラウールは見惚れた。同時に、森の妖精かと見まがうほどの美麗な青年の前で、体を開いて自慰をしている自分の姿に羞恥を含んだ興奮を昂らせる。
「はっ、ぁ、う……ふ、ぁあ、ああ」
「ふふ……最高の勇者……竜殺しのラウール様。私だけの騎士……そして、私だけの情欲の獣……ああ、なんて愛おしい」
夢見心地に呟いたミクリアの手が、ラウールの怒張に触れた。手のひらで先端を撫でさすられて、ラウールの腹筋は快感に波打った。
「ふぁ、あっ、あ……ン、ぁあ……あっ」
「あなたの体に触れられるのは、私だけ……今は、私だけの騎士……ああ」
熱っぽい息を吐きだし、ミクリアは欲の切っ先から根元へと手のひらを滑らせた。たったそれだけの刺激でも、ラウールの頭の芯には快楽が駆け抜ける。
「は、ぁああう」
首をのけぞらせて声を震わせたラウールは、キュッと乳首を強くつまんだ。もう少しで絶頂を迎えられる。脚の指を握りこむと、四肢に力が入って筋肉が盛り上がった。
「なんて躍動感のある……ああ、すばらしいとしか言えない自分が、もどかしいです。あなたほど美しい人は……いいえ、獣ですらも、あなたの美しさにはひれ伏すはず。この、滑らかで力強く、しなやかな筋肉と、みなぎる命の熱を包んだ肌の雄々しさは、神ですら魅了される」
「んっ、ぁ、過大評価……っだ、ぁ……は、ぁあ」
美しいと形容されるのは、むしろお前だとラウールは胸中にある音を声にしようとしたが、彼の細く長い指に蜜嚢と尻の谷の間をくすぐられて、言葉を嬌声に変えられた。
見事な金髪は猫の毛のようにふわふわと柔らかく、美貌を謳われる女王ジーヌに瓜ふたつと言われる卵型の輪郭と、内側から発光しているような白い肌。若葉を思わせる緑の瞳と長い首。しなやかな体つきと優美な立ち居振る舞いは、いくら簡素で粗末な衣装をまとっていたとしても、高貴な気配を隠せはしない。
対する自分はどうだと、ラウールは口の端を持ち上げる。
漆黒の髪に太い首。どっしりとした肩と盛り上がった胸筋。クビレができるほどに鍛え抜かれた腹筋は、美しいと言えなくもない。だがそれは、あくまでも戦士としての美であり、情欲をそそるものではないはずだ。ましてや、男の劣情を煽るものでは決してない。
しかし、目の前の美麗な青年の股間は若い欲を忠実に示していた。裸身を陽光にさらして、己の興奮をラウールに見せている。
「いいえ、ラウール様。あなたは神をも魅了し、淫欲の闇へと引きずりおろせるほどに妖艶です。私ごとき若輩者は、虜となる以外の道を選べない」
ミクリアの息が濡れた陰茎にかかり、ラウールは息を呑んだ。愛らしいサクランボを思わせる唇が開いて、欲の象徴が含まれる。美しいものに己の肉欲が吸い込まれる光景に、ラウールは脳を揺さぶられた。
「っ、は……ぁあっ、あ、ミクリア……あっ、ああ」
じゅるじゅるとわざと吸い音を立てられて、鼓膜を犯されたラウールは首を振って全身に力を込めた。いくら抗っても、彼の口内に欲液を放ってしまう結末は変わらないのに、少しでも遅くしたいと願うのは、口腔のぬくもりを味わっていたいからか、穢れのない欲望とは無縁な容姿の彼を汚すのを恐れるためか。
「んぁ、あっ、は、ぁああ」
切っ先の縁を舌先でなぞられ、あふれる淫液を啜られて、ラウールは腰を浮かせた。尻の谷がキュッと閉まって、奥の孔がヒクリとうごめく。蜜嚢の裏側をくすぐられて、ラウールは弾けた。
「っ、は、ぁあ……っあ、ああ」
強く吸引されて、筒内の液を絞られる。一瞬の浮遊感の後に訪れる恍惚の空白に浸っていると、ほほえんだミクリアが口を開いて舌に乗せたものを示した。自分の吐き出したものを見せられて、ラウールの背筋がゾクリと薄暗い喜びに震える。
慈愛に満ちた笑みを浮かべて、ミクリアは口内にある液を手に落とした。盛り上がったラウールの胸筋に、彼の手のひらが乗せられる。己の欲液で濡れたミクリアの手に胸乳を揉みしだかれて、ラウールはうめいた。
「んっ、う……は、ぁ……うぅっ」
「いい顔です……この表情を独り占めできるなんて、私はなんて幸福なんだろう」
ひとりごとのような声を口内に注がれて、独特の香りと味のする舌で上あごを擦られる。この味は自分の欲液のものだ。美しい青年の口に放ったという事実を再確認させられた。
「ふ、んぅ……うっ、んぅう……う、ふぅ」
濃厚なキスと共に胸乳をもてあそばれて、自分でさんざんいじくった突起をつままれ転がされれば、放ったばかりの肉欲にふたたび熱が集まっていく。身を寄せてくるミクリアの陰茎がラウールの先端とぶつかって、脳髄をとろかせる刺激が走った。
「ふは、は……んぅうっ」
硬く凝ったミクリアの欲に、どうされるのかを知っている肉体が淫らに開く。ヒクヒクとわななく秘孔の口と、奥の肉壁の蠕動を意識して、ラウールは硬く目を閉じた。
「恥ずかしいんですか? こんなに淫らな体になっても、精神は気高いままなんですね。だからこそ、あなたは美しさを失わないんだ。どれだけ汚しても清らかなままでいられる……愛しています、ラウール様」
うっとりとした囁きに、ラウールの内側が甘い痺れに見舞われる。剣呑な戦の躍動を、淫靡な情動に作り替えたのはミクリアだ。彼はラウールが人々から離れて暮らす理由を看破し、平和な世界では持て余してしまうラウールの血の滾りを発散させる方法を提案してきた。いや、半ば無理やりに押しつけてきたというべきか。
「私だけの騎士……竜殺しのラウール様……さあ、思い切り咲き乱れてください」
艶麗なほほえみに、ラウールの肉体は淫欲にわなないた。
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