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 数日後、土曜の昼。  家でまったりしながらネットニュースを見ていた佑哉が、「あちゃー」とつぶやいた。 「どうしたの?」 「一ノ瀬さおりさん。喫煙で芸能活動停止だって」  佑哉のスマホを覗くと、なんと、佑哉のお相手役だった女の子のスキャンダルが報じられている。  バレンタインデーに年上の実業家の人と食事をしていて、飲酒をしたりタバコを吸っていたらしい。  そのまま都内の高級ホテルに消えていったとのことで、相手の男性は淫行か何かで捕まりそうだし、女の子はSNSで叩かれまくっている。 「お酒とタバコはダメですよね」 「うん。ていうか、佑哉は大丈夫なの? 共演してて、イメージとか」 「どうでしょうね? まあ、世間の人がどう見るかなんて、俺には制御できないことですし、考えても無駄な感じがします」 「ドライなんだね」 「俺は先輩がいればあとはなんでもいいんで」  抱き寄せられて、ちゅうっと頬にキスされた。  ……と、佑哉のスマホが震える。  辰哉さんだ。 [佑哉のことをでっちあげようと躍起になってるのは全部握り潰してるから、ご安心を] 「いい会社でしょ、講和社」 「もしかして辰哉さんが週刊ウェンズデイの記者やってるのって……」 「そうそう。講和社に利害のある作家とかモデルに関する記事を他にすっぱ抜かれないように、見張ってるらしいです」  一ノ瀬さんとやらは専属ではないので、どうにもならないらしい。 「人のふり見て我がふり直せなので、俺も気をつけます。外で先輩にイチャイチャしようとするのとか」 「うん。男と、なんてなったら、シャレにならないよ」 「俺は先輩を傷つけたくないだけですけど」  いすに座った佑哉が、ぺんぺんと太ももを叩いて、両手を広げた。  おいでということだろうか。  おずおずと向かい合わせに膝に乗ると、佑哉は満足そうに、俺のあごのあたりを触った。  この構図って……。 「いや、壮観ですね。やっぱり、膝に乗っけるなら先輩が一番」 「何が」 「いや、先輩、なんか最近やたら気にしてたでしょ? 俺が女の子と……」 「え? 全然? 全然っ」 「いやー分かるって。もらったチョコ仕分けてるときも、手作りのは露骨に嫌そうに避けてましたもん」 「う……」  恥ずかしい。ものすごく恥ずかしい。  こんな子供じみたやきもち。  人気モデルと校則違反で付き合ってるんだから、女の子たちの無邪気な好意は、さらりと笑顔でかわすくらいしないといけないのに……。 「あきれた……?」 「いえ。可愛いです。愛しくなっちゃう」  近距離でちゅっちゅっと口づけられて、赤面する。 「言っておきますけど、俺も、たまにもやっとしてますからね。女子が、佐久間く〜んって言って、無駄に頼ったりしてるの」 「……? そんなのないよ」 「いえ、あります。『その用事、絶対先輩と話したいだけじゃん』っていうの、普通に通りがかりでも目撃しますから。実際はもっとありそう。自覚した方がいいですよ」  佑哉曰く、漠然とモデルだからって寄ってくる女子と、明らかに委員長に頼りたくて寄ってくる女子では、圧倒的に後者の方が危険……とのこと。 「チョコ、食べますか? 食べ物に罪はないですよ」 「既製品なら……」 「やっば。かっわいー……」  むぅっと言って背を丸め、胸のあたりに顔を埋めたら、佑哉は、僕の頭頂部に口づけながら、なでてくれた。  両思いで両やきもちやきで――離れられないな、と思う。

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