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◇ 「ぁあっ…ぁ、あぁ…っ、!」 カメラと照明の向けられた広いベッドの上で、 男に犯され乱れる後輩の姿を、 目に、脳裏に、焼き付けるように見つめる。 バイトや学校帰りに、いつも探していた。 知らない人間が家の前にいたから駆け寄って、 姿を眩ませたお前がどうしているのか、何か出来る事はないか、この機会を逃したくなくて必死だった。 ーー、その結果がこれだ。 「、ひゃ…んっ、んぁぁ…ッ、ぁっ、」 薬を飲まされてから甘く上擦った声を上げるようになったのを聞くのは偲びなくて、 耳を塞いでやりたいのに、そんな事さえも出来ない自分に心底嫌気がさす。 大事に、思っていた。 力になりたかったのに、余計に傷つけて。 居なくなってからずっと、こんな場所に居たのか。 大人しいけどよく笑う、明るい子だったのに。 身体の多数の痕が辛い日々を物語っていて、 自責の念から強く噛んでいた唇からは血が伝った。 「何だそれ、男泣きってやつ?熱いなぁ、」 ふいに先程までタバコを吸っていた黒髪の男に声を掛けられる。口調は笑っているのに凍てつくような目が笑っていなくて、ゾクリと嫌な汗を掻く。 「お前みたいなタイプは、自分より周りがやられる方がクんだろ。お互い哀れだよなぁ、善行選んだ筈が、余計に相手傷つけて。」 「………」 「…でも、ソレ。可愛い後輩のえろい姿に素直に反応してる辺り…青臭くて情け無いなぁ先輩?」 バクン、と心臓が鳴る。 信じ難くて吐きそうだ。 「丁度いいけどな。大雅、帽子貸せ。」 「あ?…ンだよ、ソイツも使う気か?」 「ああ。罪悪感は深い方がいい。」 「………お前も大概エグいよな、禅。」 私物らしい黒いキャップを持ってきた男が俺に被せると拘束を解き、後ろ手に手錠を留めなおす。 これから起こる事を悟り、頭を下げ懇願した。 「っ………やめてくれ…」 「何甘いこと言ってんだ。お前のために後輩くんが身体張って配信されてんだぜ、フェアじゃねぇだろ?」 「…、配信……?」 「お前のせいでお怒りの、上へのご機嫌取りにな」 そう冷笑してポケットから取り出した黒い端末を操作し、画面を向けられる。 そこには今現在のこの部屋、ベッドでの映像が流されていて、 白いシーツの上で淫らに乱れる後輩の姿が、 画面にはっきりと映し出されていた。

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