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エピローグ
「ま、俺のおかげだよな」
「そうなんだけどさ〜……タダ働き、なんか理不尽!」
「ああ? お前がそんな『僕幸せです〜』ってヘラヘラできてんのは誰のおかげだよ?」
「……真治サマです……」
クリスマスも近い。ケーキ屋の稼ぎ時だからお前ら手伝えと真治にほぼ強制的にチラシ配りに駆り出された。
「しかもなんで俺と透瑠だけサンタ? 透瑠は可愛いからありがとうだけどっ」
「合うサイズがねえから仕方ねえだろ」
そう答える真治はいつものコックコート姿だ。
ま、いっかあ〜サンタやってみたかったし、と怜が自分の赤い服の裾を引っ張った。
ホントに何でも着こなしてしまう。
怜が店の前でチラシを持って立っただけで、長い行列ができてしまった。
あれは俺の、と言いたくなるのをぐっと抑えて笑顔でチラシを配っていると、後ろから知ってる声がした。
「……何やってんのあんた達」
「あ、沙雪さん」
「沙雪さん! みてみてサンタ! 似合う?」
「はいはい、あんたは何着ても似合う」
「……知り合いか?」
「うん、怜の会社の人」
透瑠がお互いを紹介する。二人はどうも、と軽く頭を下げた。
「ここのケーキ一回食べて見たかったのよね。……オススメってあります?」
「このチョコのやつ美味しいよ!」
「あんたはちょっと黙ってて」
「……今年はこっちのレアチーズのヤツが……中はフランボワーズと二層になってて……」
「下がタルト生地になってるよ!」
「ふーん、じゃあそれ予約しよっかな。――お願いします」
沙雪が真治を見上げると、真治が一歩後退ったのを透瑠は見た。
「……ありがとうございます」
透瑠の横を通って予約票を取りに行く。
肌が浅黒いので分かりにくいが、真治の首が赤くなっているような気がした。
「?」
「沙雪さん、まさかそれ一人で食べるの?」
「……悪い?」
「悪くない、悪くない」
沙雪の怒りのオーラを感じ、怜は引きつった笑顔を見せて両手を振った。
真治の差し出した予約票に名前と連絡先をさらりと書くと、
「そんじゃまたね。萩原くん、明日は朝から打ち合わせだからね。透瑠くんもね」
颯爽と立ち去る沙雪を三人で見送る。
予約票を握ったまま動かない真治に怜が「おーい」と声をかけている。
「真治、ちょっとヘン?」
怜が透瑠に尋ねてくる。くすり、と微笑むだけの透瑠に、
「え、何? 透瑠なんか知ってるの?」
「別に」
え〜、なになに教えてよ〜、と怜が透瑠に覆いかぶさってくる。
怜の体温を全身に感じながら、透瑠は心の底から――笑った。
Fin →オマケに続く。
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