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 赤城さんが『すまない』と言った瞬間。  正直俺は、かなり動揺した。  だけどその謝罪が【そういう意味】の謝罪じゃないと分かって、単純思考な俺は安心してしまったのだ。 「赤城さんのこと……俺に望み、ありますか?」 「な、に……言って……っ。本渡君、待って、落ち着いてほしい……っ。……僕には、その……恋人、が……っ」  ――赤城さんには、江藤がいる。  だから俺のこの言葉は、どう考えても不純だ。  赤城さんに彼氏がいると、俺は知っている。  そしてその彼氏に俺は、赤城さんの前で。  ――【赤城さんとはただの友達】だと言った。  ……だからこそ赤城さんは、困惑しているんだ。  それでも、こっちだって引きたくない。 「赤城さんに彼氏がいることは知ってます。でも俺なら、アイツよりも赤城さんを幸せにすることができます……ッ! 俺は、赤城さんを幸せにしたいんス!」  赤城さんの顔が、どんどん悲しそうに歪んでいく。  幸せにしたいと言いながら、俺は今……なにをしているんだろう。 「好きッス。赤城さんのことが、本気で好きなんスよ。赤城さんには幸せになってほしいし、ずっとずっと笑っていてほしいって、俺、マジでそう思ってるんスよ……ッ」 「本渡君……っ」  赤城さんの瞳が、小さく揺れている。  腕の中にある体だって、困ったように身じろいでいるじゃないか。  迷惑をかけている自覚は、十分ある。  ――もう、会ってくれないかもしれない。  ――それでも、俺は……ッ。 「赤城さん、好きです。メチャクチャ、大好きです……ッ」  顔を、ほんの少しだけ傾ける。  それは、キスをするためじゃない。  ――俺は今から、もっと酷いことをする。 「――ひあ、っ」  ――赤城さんの体が、ビクリと震えた。  ――聞いたこともない、高い声を出して。 「ほっ、本渡君……っ! な、なにし――ぃ、っ」  驚いている赤城さんの声は、聞こえている。  だけど俺は、ここで止めてあげられるような善人じゃない。 (赤城さんのこと、幸せにするって言ったくせに……ッ)  さっきの言葉はなんだったのか。  モチロン、ウソじゃない。  俺は赤城さんを、江藤以上に愛してあげられる。  ――これは、乱暴すぎる【証明】だ。 「やめ――ん、っ」  髪から、いい匂いがする。  しっとりとした肌が、気持ちいい。  ――唇を寄せて、俺が噛んでいる赤城さんの耳たぶも……柔らかくて、好きだ。 「ほ、本渡君……っ! こういうことは、困る……っ!」 「イヤッスか?」 「……っ」  赤城さんはきっと、俺のことが嫌いじゃない。  むしろ、好きな方だと思う。  ――だけど、その【好き】は……俺と、違うんだ。 「赤城さん、スミマセン。……俺、ホントは……ッ」 「っ!」  赤城さんの体に、俺は自分の下半身を押しつけた。  硬くなったソレに、赤城さんが気付かないはずがない。 「江藤が言っていた通り、赤城さんが淫乱だってかまいません」 「な――」 「俺、江藤より優しくします。絶対、痛くしないッス。……だから」  耳に唇を寄せて、囁く。 「――赤城さん。……俺を、選んで」  舌を、耳に這わせる。  そうすると、赤城さんがまた。  ……小さく、震えた。

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