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ぐちゃぐちゃのベッドの上で伊織の腕の中で目が覚めた。 改めて、昨日一線を越えてしまったのかと記憶がよみがえってくる。背中に感じる素肌のぬくもりに、頬が熱くなる。 ベッドの上に、柊さんはいない。 シーツにくるまって慌ててリビングへ出ると、コーヒーの香りがした。 「おはよう、眠れた?」 「おは、よう・・・ございます」 昨日伊織と言い争いをしていた椅子に座って、昨晩は何もなかったかのように柊さんはコーヒーを飲んでいた。 ソファを見ると、毛布がかかっている。そのままベッドで眠ってしまった俺達に対して、柊さんはソファで寝ていたのかと思うと、心が罪悪感で一気に冷える。 「柊さん、あの」 「どうする?これから・・・」 柊さんはため息交じりに、俺の言葉を遮った。 「伊織くんのとこ、戻ってもいいんだよ」 「え・・・?」 「ずっと片思いの話を聞かせてきたんだ。通じ合えて良かったじゃない」 昨日の強い口調の柊さんはもういないらしい。普段の優しい声で、顔がひどく悲しげにゆがんでいる。今にも泣きそうな顔の柊さんの肩を抱きしめた。 「じゃあ、どうしてそんな顔してるんですか」 よくみると、マグカップを持つ手も震えている。 「だって、昨日は伊織くんに夢中な君にすごく腹が立っていたから余裕が無かった」 おいで、と言われて柊さんの膝の上に乗る。シーツ一枚を羽織るように着ているだけなので、柊さんのジーンズに素肌が触れた。 「けど、1人でソファに寝て、起きたら色々考えてしまって」 背中から抱き込むようにされて、昨日の激しくされた記憶が脳内に蘇って、恥ずかしくなる。 「でも、柊さんがいなかったら俺はずぅっと片思いで、伊織は女泣かせのままでしたよ。2人がしゃべってるの、俺に聴かせてくれなかったら俺たちはずっとどうしようもないままでしたから」 お互いにお互いを好き、と言えなかっただけだったのだ。随分長いこと片思いをしてきたものだと想ってしまう。その分、柊さんの事が愛しくて仕方無い。 「だからありがとうございます。嫉妬してもらえて、嬉しかった」 伊織に対して嫉妬をする姿なんて想像もしていなかった。ただただ、単純に嬉しくて叫び出しそうになる。  「俺、あなたの事が好きです」 ぎゅっと抱きしめられる。心音がすごく早い。愛されているんだ、という実感が身を包む。 「離したくない。渡したくない。笑っていて欲しいんだ、君には」 強い言葉でそう言うものの、少し困ったような顔で柊さんは笑う。 「だから正直、伊織くんも嫌いにはなれない」 彼の事は嫌いになりきれないし、君には今まで通りいて欲しいんだ。 彼を思うけなげな君が好きだから。 寝室から伊織が出てきた。 「受けてたつぞ」 ぐいっと片腕を掴まれる。 「君には渡さないよ」 「そいつは俺が昔から好きだからな。歴浅はだまっとけ」 「はっ、そっちこそ俺がいなかったら奏多くんに触る事もできなかったくせに。生意気いうんじゃないよ」 ぎゅうっと俺を膝の上にのせて後ろから抱きしめてくる柊さん。 まさかこんな事になるとは思っていなかったけれど。与えられる温かい体温に今は甘えていよう。

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