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柊さんの家から3分もしない距離のコンビニでお弁当やおつまみを適当に選んで買って出ると、スマホの着信音が鳴った。
「柊さん?」
どうしたのだろう。ハラハラしながら電話に出たが、応答はない。どうやら向こうはスピーカーになっているようで、2人がぽつぽつと話し合う声が聞こえる。
俺が出た後に何の話をしたのか、2人とも随分穏やかな口調な気がする。
「昔さ、俺あいつと結婚したいって言った事があったんだよ」
伊織が言いにくそうに言っている。覚えていたのか、と心臓が跳ね上がった。
「小学校の頃で、俺んち親どっちも働いてて家にいなくて、奏多んとこでいつも世話になってた。寂しくて泣いてたら、僕が一緒にいてあげるってあいつが言い出したのが始まり」
伊織が俺の事を語る口調が優しくて、ずっとこの声を聞きたかったのを思い出した。
歩きながら、スマホの音声を聞く。
「奏多にずっとそばにいて欲しいと思った。この家の子になりたいと思った。そん時、好きな人とは結婚したらずっと一緒にいられるって知ったばっかでさ。だから俺、奏多と結婚するって言ってたんだ。そしたら、周りの奴とか気持ち悪いって言って。奏多にも気持ち悪いって言いやがって」
苛立たしそうな伊織の声。柊さんは、静かに相づちを打っている。
「奏多は気にしてたみたいだけど、俺は気にしなかった。でも、中学にあがった頃から、男友達から周りの奴らから奏多が嫌がらせされて、こんなんじゃダメだって」
嫌がらせ。確かに、覚えがある。しかし、それはてっきり自分がどんくさいとか、空気が読めないからだとばかり思っていた。
「俺が女が好きっていったら奏多に迷惑かかんなくなんのかなって」
伊織の言葉に、息が止まる。
今、なんて言った?
「でも長続きしなくて、けど女は近寄ってくるし。俺も女が好きってしないと奏多がまたいじめられたら困るから」
目の奥がじんと痺れて、鼻がツンと痛くなる。伊織がここまで考えていてくれてたのに気がつかなかった俺はとんでもない大馬鹿者だ。
「わざと女に振られる事したりして、頑張って付き合ってみようとしてもうまくいかなくて。その度、奏多に甘えてきた。振られたって嘘だって何回も吐いた。・・・でも、昔みたいにできなくなってて、話も出来なくなった」
ずびっと、鼻を啜る音がする。
「頼むよ。俺から奏多とらないでくれよ」
伊織が泣いてる。そう分かった瞬間、足は走り出していた。
スマホの音声は止まらない。
「なるほど、じゃあ君は奏多君の気を引くために女の子と遊んでたんだ」
伊織の嗚咽に混じって、穏やかな柊さんの声がする。
「だってそうだろう。君からはずっと好きだって言わないで、ずうっとあの子に甘えてきたんだろ」
穏やかに、怒っている。でも柊さん、俺だって嫌われるのが怖くてずっと伊織にちゃんと好きって言ってこられなかったんだ。
「どうしてそんなに残酷な事をしたんだ」
柊さんの家のドアの前で聞こえた言葉に、涙が出てきた。
俺、柊さんにも残酷な事をさせてる。
「全部、俺が悪いんです!だから、伊織を責めないでやって下さい・・・!」
柊さんの家に入って、リビングに急ぐと、2人は立って話をしていたらしい事に気づいた。
コンビニの袋を捨てるように置いて、柊さんに駆け寄る。
「ごめんなさい、俺です。俺がちゃんと伊織に言えてれば全部良かった話だったんだ。俺、ごめんなさい、柊さん」
柊さんに抱き留められ、口づけをされる。
これまで何度もされてきた愛を与えられる行為に、条件反射の快楽で頭はすぐにぼうっとなった。
「んっうぅ・・・!」
これはベッドの上でされるキスだ。これからそういう事をするよ、という時の合図の口づけに呼吸が乱れる。
「好きだよ、奏多」
切なさの籠もった柊さんが耳元で囁く。体の輪郭をなぞるように撫でる柊さんの手が、シャツの下の素肌に触れた。
「俺、俺も・・・」
柊さんが好きです。そう言ってあげたいのに、食い入るように見つめてくる伊織の目の前で口が動かなくなる。伊織にこんな姿見られたくない。また泣かせてしまう。泣かせたくない。
「やめろって!」
目を見開いた伊織が、俺を見下ろしている。嫉妬をされている、という事実に心は甘く震えた。今まで追いかけるだけ、甘えさせるだけだった伊織が実は俺を今でも好きで、俺を見ている。
言葉が続けられない俺を、柊さんはリビングの絨毯の上に押し倒して上に覆い被さってくる。
「あっ、ああっ」
首筋に強く吸い付かれて、声が抑えられない。
今までこんな事された事なんてない。いつも、ベッドの上でゆっくり優しく色んな所に触れられながら、愛されていた。
見上げた柊さんの目は悲しさと興奮が混じったような目をしていた。きっと、伊織に見せつけたいんだろう。俺が柊さんに啼かされながら愛される姿を。
2人の男に嫉妬されている、という薄暗い幸福感が胸を満たしていく。堪らなくなって柊さんの唇に口づけをすると、ジーパンごと下履きを脱がされた。
「あっ、あっ、だめ!しゅ、うさんっ」
ベッドに連れていかれて、柊さんに後ろから突かれる。すっかり後ろでセックスが出来ると知った体は、快楽を簡単に感じるようになっていた。しなやかな体を晒して俺を愛する柊さんと、喘ぎ声の止まらない俺とを、伊織は見ている。
「・・・かなた」
背中に感じる体温と、柊さんの耳元での声でももう、体は反応してしまう。
「ほら、伊織くんに見せてあげようか」
「やだぁっ!」
ほら、こんな事になってる。柊さんはそう言いながら、自身を抜くと、俺の体を膝立ちにさせた。先走りが滲んだそれを伊織の前に晒される羞恥に体が熱くなる。
「奏多」
「いお、りぃ・・・」
興奮した顔の伊織が、手を伸ばしてくる。欲情している事を下半身が示しているのを見てしまった。思わず喉が鳴る。
「ほら、ここも感じるようになったのも教えてあげないとな」
「ひぁあ!」
背後から回された柊さんの手に、胸の突起をいじめられて高い声がでてしまう。いつもならもっと優しく触って舐めてくれるのに、いじめられるような強い刺激に頭がクラクラした。
あられもない姿を伊織に見られている。恥ずかしさすら気持ち良いと感じてしまった。
「ほら、俺に取られたくないんじゃなかったのか?」
胸や首筋、俺の感じる場所に触れながら、柊さんは挑発するように伊織に言う。
「ふざけやがって・・・!」
目の前で、勢いよく伊織がシャツを脱ぐ。柊さんに負けず劣らずの無駄のない体に思わず見とれてしまった。
ベッドの上に乗り上がると、伊織の手が俺の頬にふれた。
「奏多、ずっと好きだった」
余裕がない様子で言う伊織の言葉に、どきっと心臓が跳ねる。ずっとずっと聞きたかった言葉に、言葉が出る前にその口を貪っていた。唇の先、歯を超えて舌と舌を絡めると体の芯からぞくぞくする。伊織とキスをしてる。それだけで下のものは反応してしまう。
「おれ、おれっ」
感情が滲み出そうな口が、後ろから柔らかく塞がれる。
そして、背中にいた柊さんが優しく俺を仰向けに倒した。
「俺の事はほったらかしかい?」
仰向けにされた顔の横に、柊さんのソレが触れる。頭を撫でる手に、口淫を求められているのに気づいた。今まで、させられた事のない事だ。
伊織に足が開かされて、後ろの穴に伊織のものが触れるのを感じる。
上も下も、いやらしい事になっている。欲を目に浮かべた柊さんに気持ちよくなって欲しくて、ソレを口に含む。
「むぅぅうっ!んむっ!」
口に含んだのと、伊織に入れられたのはほとんど同時だった。伊織の固いものが入り込んでくる衝撃に体が跳ねる。伊織とセックスをしてしまった。ついに。
ずっと想っていた人の体温を直に感じて思考が溶ける。口の中によだれがあふれて、竿ごと唾液を飲み込むと、柊さんが切なそうな声を漏らした。俺を愛してくれてる人が、俺で感じてる。
その事実が嬉しくて、激しく口を動かすと、頭を優しく撫でられた。身をよじってより深く口に銜えようとすると、伊織が中で良いところに当たる。
「あんっうあっあっ!」
気持ちが良い、としか考えられない中で、伊織が俺の前を触る。ぐちゃぐちゃといやらしい音が耳を犯す。
柊さんのソレを口いっぱいに銜えながら、快楽に耐えきれずに達してしまう。
その後は、伊織と柊さんが射精をするまで、上も下もなく愛されて快楽を与えられ続けた。
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