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第17章 第2話(2)

「琉生さん! 琉生さん大丈夫ですかっ?」  怯えたように仕切り壁に身を寄せ、縮こまっていた如月は、中に飛びこんできた群司に気づくと顔を歪ませた。 「や、がみ……、な…で、ここ、に……」 「すみません、遅くなって。でも、もう大丈夫ですから。助けに来ました」  傍らに膝をつき、腕を伸ばして自分のほうへ引き寄せると、如月は縋りつくように身を寄せてきた。その躰を、群司はしっかりと抱きしめる。 「もう大丈夫だから、なにも心配しないで」  群司の胸に顔をうずめた如月は、胸もとのシャツを握りしめながら何度も頷いた。 「どこか痛いところはない? 苦しいとこは?」  躰を離して自分の着ていたスーツの上着を素肌に着せかけると、如月は熱っぽく潤んだ眼差しで群司を見上げた。赤く上気した頬。薄く開いた口から繰り返される、浅く短い呼吸。 「琉生さん、身体、どっかおかしいところある? 舞台の上で、なにか飲まされたでしょ」 「か、だ……つい……」 「え?」 「からだ、あつい……」  如月は縋るように群司の二の腕をそっと掴んだ。その手が、かすかにふるえていた。  額から頬にかけて触れるとたしかに微熱があるようだが、それとは別に、頼りなげに自分を見つめる眼差しの中に、ある種独特の熱を孕んでいた。身体を重ねたからこそはっきりとわかる、特有の色香。如月は、発情しているのだと理解した。  ふと見ると、薄い布に覆われた下腹部がかすかに反応している。群司が手を伸ばして触れると、如月は顔を真っ赤にしてビクッとふるえた。 「やっ、ダメッ」  弱々しく抗おうとする躰を引き寄せる。 「琉生さん、大丈夫だから逃げないで。いま、いちばんつらいのはここ? ほかに変なとこない? 舞台でなんの薬飲まされたかわかる?」 「わ、わかんな……」 「あのね、落ち着いて聞いて?」  群司は如月の肩に手を置くと、まっすぐにその顔を覗きこんだ。 「あの舞台で行われていたのは、事前に捕らえておいた人間に即効性のあるフェリスを飲ませて、その効力がどれほどのものかを観客の前で披露すること。見世物にされたひとりめは、細身の成人男性でした。それがわずか数十秒で鍛え抜かれた格闘家を凌駕する体型になって、試合とは到底言えないワンサイドゲームを繰り広げることになった。実験台にされたのは、藤川です」  群司の言葉に、如月は息を呑んだ。 「それからその次に予定されていたのは、フェリスの力を使って成人男性をその場で女性化させて、複数の男たちでその躰を弄ぶこと。標的にされたのがだれか、わかりますよね?」  群司が問いかけると、如月は口唇を戦慄かせた。

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