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番外編~ある幸せな休日~ 第2話(4)

 群司はどんなときにも自分をいちばんに考えて、大切に扱ってくれる。身体を繋ぐときにも情熱的に見せかけて、そのじつ、つねに自分のことを気遣ってくれていた。女性ではないのだから、壊れ物のように扱わなくても大丈夫なのにとそのたびに思うが、大切な相手を乱暴に扱うことなどとてもできないと真摯(しんし)な表情で即答する。受け入れる側の負担は、とてつもなく大きいのだからと。  男同士の経験ははじめてのはずなのに、群司は最初から、とても慣れているように見えた。それが気になってあるとき尋ねると、好きになった相手が同性だったから、自分なりに調べて情報収集をしていたのだと照れくさそうに答えた。どういうリスクがあるのかちゃんと知っておかないと、あとで悔やむのは自分だから、と。 『自分の欲求を満たすことを最優先にして、大切な人、傷つけるわけにはいかないですからね』  なにかあってからでは遅い。俺の最優先事項はいつでも、琉生さんを守ることにあるのだからと群司は笑った。  どこまでも誠実で、自分が向けた以上の深い愛情で包みこんでくれる、かけがえのない存在―― 「んぁっ……」  咄嗟に声をあげた瞬間、舌と口で育て上げていた雄芯がボロリと口から零れ落ちた。はしたなく蜜を垂らす己のものをきつく吸い上げられ、すでに準備ができている内壁を指で掻き交ぜられてしまったら、喉の奥から()り上がる嬌声(きょうせい)をこらえることができなかった。 「ひう…っ、……っや、ぁっ! ダッ、メ……、っんんんっ……ダメっ!」  如月は全身を突っ張らせて頭を振りたくった。感じすぎてしまって、頭の中が沸騰しそうになる。 「やっ……や……っ……出ちゃうっ……出ちゃ……っ」 「気持ちいい? いいよ、イッて」 「いやっ……、いや! 群司のでイキたい! 群司と一緒がいいっ」  必死に訴えるその目から、涙が零れ落ちた。身体に与えられる悦楽と同時に感情が昂ぶりすぎてしまって、自分でもどうしたらいいのかわからなくなっていた。  群司……群司……。  身を起こして振り返り、恋人に向かって必死に手を伸ばす。手首に輝くのは、彼からもらった愛の(あかし)。群司は笑いながらその手を取って、自分のほうへと引き寄せた。 「いいよ、おいで」  両手を差し伸べられて、躰の向きを変え、夢中で抱きつく。その頭と背中を、恋人のあたたかな手があやすように優しく叩いてくれた。

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