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第1話
「律 くん、気持ちイイよ、、ねえ、律くんもイイでしょ?」
はあはあ息を荒げて腰を振ってるおじさんが、体をかがめて俺の乳首を舐める。
それに合わせてピクリと体を震わせて、息も絶え絶え、みたいな感じでおじさんの首に腕を回した。
「んっうん、きもちいよおっ」
俺の中のおじさんがぐっと大きくなってすぐ、体内に射精の感覚。どくんどくんって脈打ってる。
ゴムは付けてるよ。ルールだし、最低限のマナーだからね。
おじさんはそのままブツを抜かずに抱きついた体勢のまま胸のところに顔を埋めてるから、俺の方から両頬を包んで軽くキスした。
「今日も来てくれてありがとう。ちゃんと気持ちよくなれた?」
「こちらこそ、いつも癒しをありがとうね。凄くよかった。」
とろけたように、へらっと笑う。俺の得意な顔。
心底満足した様子のおじさんは優しく頭を撫でて体を起こしてくれた。
この人は常連さん。
俺がまだ大衆店にいた頃から指名してくれていて、大事な大事なお客さま。
ずるっと抜けたゴム付きのソレをお掃除してあげて、ちょうど15分前だった。
今日はこの人が最後だし延長交渉しても良いけど、もう疲れちゃったなあ。
相変わらず頭をなでなでしたままのおじさんが腕まくらの体勢になっておいで、って言うから、大人しく腕の中に収まった。
もう眠くなってきちゃった。
「律くん、眠い?」
「うん、、ちょっと気持ち良すぎて疲れちゃった」
「この後、予約入ってるの?もし良かったら延長して少し休んでいったら。俺ももう眠いし」
そう言うおじさんは本当に愛おしい人を見る目をしてて、演技とか無しに思わず首に腕を回して抱き付いた。
優しい。この人はいつも優しい。
いや、この人に限らず、もうほとんど新規を受け付けてない俺のお客さんはみんな優しい人ばっかりだった。
長くこの世界に居て、初めの頃はひどい扱いを受けたりもした。それも辛かったけど。
こうやって優しくされて、この瞬間だけは愛されて、お金も貰えて、今の方が満たされてるに決まってるのに、がむしゃらに枠を埋めまくってたあの頃よりも、ずっとずっと心が寂しい。
この仕事を続けてる以上はこれがずぅっと続くんだろうなあ。
「ほんとに?ありがとう、だいすき!」
湯船にお湯を溜めるために浴室に向かいながら事務所に延長の電話を入れる。
ふと鏡に映った自分と向かい合って、髪をかき上げて綺麗に笑ってみせた。
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