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第10話
見慣れない天井をぼーっと見つめて居ると、頭には律さんの顔が浮かんでくる。
あの後、律さんはもう一度湯船にお湯を溜めてその間に体を洗ってくれた。
ちょっとむずむずしていたお尻にはデリケートゾーン用のボディソープを丁寧に泡立てて撫でるようにしてくれて、俺はほとんど何も言えずにただ律さんの鍛えられた身体ばかりを見ていた。
身長は俺とそう変わらないのに、まるでお手本のように筋肉が盛り上がった体は、キレイな顔とはなかなかにアンバランスで、それが妙にエロかった。
律さんが俺を後ろから抱き抱えるようにしてふたりで湯船に沈むと、時折律さんが肩のあたりにちゅっちゅって音を立てて唇を寄せる。
お仕事中もそんな感じですか?って聞きそうになったけど、そうだよって言われたらどんな反応をすれば良いか分からなくて、ただただ律さんの気まぐれなスキンシップに身を預けるだけだった。
用意してもらったベッドは律さんと同じ甘い柔軟剤の匂いがしてる。
昨日まで普通に学校に行って授業を受けていたのに、なんだか今日一日で全く別の世界に来ちゃったみたい。
ここにくるまではちょっと怖かったし、断ろうかと思ったけど、そういう不安とか緊張は律さんと触れ合ってどんどん溶けていった。
律さんはお仕事でそうしてくれているだけかも知れないけど、さっきお湯の中でくっ付いていた時、恋人ってこんな感じなのかなあって胸がソワソワして思わず俺からキスしたりもした。
ふふって笑った律さんは、俺の体を力いっぱい抱き締めてくれて何度も何度もキスをくれて。
でもなんだが、
さっきまでの幸せな気分とは反対に、今はひとりぼっちの海に落ちていくみたいな感じがしていた。
「那月くん、那月くん!時間大丈夫?」
「え、、?あ、律さん、、」
「今日昼から授業って言ってなかった?もう11時だよ」
いつ寝たんだろ。
枕元のスマホを確認したらもう家を出る15分前だった。アラームかけなかったんだ、、。
「タクシー呼んどこうか?」
「いや!大丈夫です!起こしてもらってすみません、、」
「こちらこそ、勝手に部屋入っちゃってごめんね。昨日疲れさせちゃったなあって思って」
そう言った律さんがおでこにキスをしてきて、俺は昨日のことを一気に思い出して顔が熱くなった。
俺の顔を見て笑った律さんがもう一度、今度は顎を掬っておはよ、って唇にキスをした。
窓から差し込んだ太陽の光が律さんの茶色い髪の毛を透かしてる。
うっとりして見惚れていたら、ほら、急ぎな!って背中を叩かれて、慌ててベッドから飛び出した。
「家の鍵、リビングのテーブルにあるから忘れずにね。行ってらっしゃい」
「ありがとうございますっ、行ってきます」
自室に入っていく律さんに頭を下げてリビングに行くと、テーブルの上に鍵と、コンビニのサンドイッチが置いてあった。
それを見てまた胸の辺りがきゅうっと切ない感じがした。
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