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プロローグ

「だから、私は、あなたに興味がないから、遊んだりしません!」  何度目かになるお断りの言葉をうんざりしながら投げつける。目の前にはイケメン。正確には、とても残念なイケメン。  見た目だけならかなり良い。180センチ近い身長、細身なのに綺麗に筋肉の付いた身体、適度に明るく染めた髪、顔はやや甘め、笑うと可愛い目元が印象的で親しみやすさが全面的に出てる。更に国立大学の学生らしい。  解りやすくオメガバースで例えるならリア充スポーツマン系のα様。だけど残念な事にその正体は女なら何でもいいヤリチンクズ野郎だ。どれだけかというと、彼女がいるのに合コンで毎回違う女の子をお持ち帰りは当たり前、更にはスーパーのレジ打ち女性をナンパする程のクズ加減。当然ワンナイトでアフターフォロー無し、未だ刺されずに彼女と続いているのが不思議でしょうがない。  さてこの彼と私の関係はと言うと、定食屋のヤリチンクズバイトと客だ。  普通、客に手出そうとする!? しかも、行きつけの店なんだけど! 店主とも知り合いだよ!? 危機感無さすぎなんじゃないの!? こんなクズ野郎、デカチンのチンピラ兄さんとかにメタメタに犯られちゃえばいいんだ!  イライラとしながら立ち去ろうとするのに、ヤリチンクズイケメンはヘラヘラ笑いながら追いかけて来る。 「いいじゃん。俺頑張るからさぁ~、ね、一回だけ! 絶対損はしないって!」  何を誘われてるって、驚いた事に本当にナニを誘われている。 「あっ、もしかして南さん処女? 大丈夫だって! その年で処女だって俺引かないよ。むしろ俺がもらってあげる。」  夜9時とは言え、まだ人通りもある時間帯。駅の近くの路上、仕事帰りのサラリーマンや塾帰りの高校生もいる中で発せられるデリカシーのかけらもない言葉にプチプチと血管が切れる音がする。 「だーかーらー、あんたに興味がないの! 私はカッコイイ男の子と可愛い男の子が好きなの! その二人がイチャイチャするのが好きなの!」  青筋を立てながら声を抑えて言った私の言葉に彼は「え!」と嬉しそうに返事をする。 「カッコイイ男って俺の事じゃん!」  …違うから…。あまりにも話が通じないので頭痛がしてくる。因みに誘われてお断りをしているのは今日が初めてじゃない。漫画の中の存在かと思っていたのに、身近にこんなに話の通じない相手が普通の顔をして存在しているなんて…。世の中って色んな事がある。 「わかった。もういい、こうしよう」  どうしても断りを受け入れてくれないなら、と新たな提案をする。 「私の条件をのんでくれるなら相手してもいい。  一つ目、私が攻めるから西くんのお尻の開発させて。それから二つ目、もう一人男の子用意してその子と西くんの絡みを見せて。三つ目、やったらもう二度と絡まないで。  どう? これが全部守れるなら相手してあげる」  これだけ言えば飽きらめるだろうと思ったのに、おバカなヤリチンクズは前向きだ。 「わかった! ありがとう。俺と絡める男ね!! 探してみる!」  条件を出した私の方が「え? いいの!?」と驚いた。 「…あれ? 西くんて…バイ? 男もいけるの?」  思わず聞いた私に笑顔で西君が答える。 「まっさか~! 俺は女の子大好きなの知ってるでしょ。女の子なら小学生からオバさんまで全然オッケーだけど、男は範囲外だって! 嬉しいなぁ。南さんがオッケーしてくれるなんて。俺張り切っちゃうからね!」  呆れて何も言えない私に「あ、彼女から連絡来ちゃった。じゃーね!」と笑顔で手を振りながら去っていくイケメンヤリチンクズ西。  いや、ホント…世の中には信じられないバカがいるとため息を吐く。

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