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次の朝、これから、

 とても眠れないと思ったのに気が付けば朝。私の隣りには北山くんの背中、そしてその腕の中には西くんがいる。  あぁ、なんて夢のような光景だろう。夢だけど、夢じゃなかったー! と昨夜を思い出す。  最後は西くんが気を失うように眠り、帰ろうとした私を北山くんが引き留めた。  曰く、朝が怖いから一緒にいて欲しい。怒られても私がいれば気が削がれるだろうから、と。強気なようで、拗らせた約5年の片想いは不安になるらしい。本当は邪魔だと思ったけれど、気休め程度になるならと了承して朝を迎えた。  今このまま、二人を包み込む布団になれたらどんなに幸せだろう。息をひそめて自分は布団だと言い聞かす。息もせずに無になれ!  しばらくするともぞもぞと動く気配がして西くんの息を吐く音がすると、ゴソリと北山くんが動く。「んっ」とくぐもった西くんの声、そしてくちゅりと濡れた音。  おはようのチューですね!! なんて理想的な朝、どこまでも外さない北山くん!  悶えるのを我慢して必死で布団になりきる。  が、布団になれるはずもなく熱烈な朝の挨拶を終えた北山くんに、寝起き声で「おはようございます」と声を掛けられる。  あ、気付いてましたか。そうですか。  その声録音して目覚ましボイスにしたいんですが!  だだ漏れの願望に蓋をして「おはよう」と答えると、寝ぼけている西くんも「おはようございます」と返す。  その声も目覚ましボイスにお願いします!  そして北山くん越しに見る、ほぼ乙女の表情の西くんに『押せばいける』と私のセンサーが反応する。  まさか、本当に身体から堕としてしまうとは、恐ろしい子、北山くん!  でも、超がんばって!! 全力で応援する! 早く心も落として!!  その後、身体に朝のご挨拶をするも(爽やかな朝なのでどんなご挨拶かは割愛する)気まずくなる事もなく、北山くんとは密かに協力の契約をしてホテルを後にする。  別れ際、屈託なく「またね!」と手を振る西くんに手を振り返して帰路に着く。  さて、鬼が出るか仏が出るか――。  道端のお地蔵さんが目につき手を合わせた。 『BLの神様、お願いします!! 二人を両想いにして下さい!』

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