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嫁入り5
初めて見た暴虐王様の印象はおおむね噂どおりだった。
けれど、何故かその背中が寂しげに感じられてしまったのだ。
尊大な態度はまるでこちらが家来といった風情で、明らかに見下している様に見える。
こちらが何も言い返せないことも、抗議出来ないことも知っているといった感じだ。
なのにわずかながら違和感がある。
それが何かをただひたすらレオニードは考えてしまう。
直ぐにその答えは分かった。
レオニードが男であることに対して暴虐王は一言も触れないのだ。
美しき姫君を送ってこなかった事に対してまるで興味が無い。
美しい姫が多いと言われる国のみすぼらしい男の妃だということに対して彼は全く何も言及しないし視線もそういった感じで確認するようなものではない。
まるで、人質でありさえすれば誰でもいい。そんな態度に見えた。
ただ一番の問題が、レオニードが人質としての価値がまるでないということなのだが、そんな事どうでもいいと言わんばかりの傲慢な態度だ。
そもそも視線が全くあわないのだ。
一応レオニードを呼んで話をしているという体のはずなのに目の前の男はレオニードを視界にとどめておくことさえしない。
最初にチラリとこちらを見ただけでその後は全くこちらを見ない。
興味が無いのがありありと分かる。
礼儀作法を間違えたところで咎められそうには無かった。見ていない事を注意出来るとは思えない。
勿論、それ自体がこちらの失敗を誘うためのものでこの場にいる別の人間の忠言によりということもあるのかもしれないが、興味の無い皇帝陛下と儀礼だからと淡々とすぎゆく何かにしか見えなかった。
とんだ茶番に付き合わされている気分にレオニードはなった。
この嫁入り自体が茶番でしかないのだが、その時この暴虐王という男がよくこの茶番に付き合っているとレオニードは思ってしまった。
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