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嫁入り6

少しだけれども勉強をしたから、それが最低限の儀礼であるということが分かる言葉を残して暴虐王は立ち上がる。 本当に必要最低限のものでこちらへの気遣いなんてものは一切ないことだけは誰にだってわかった。 けれどレオニードはそんな判断をする余裕もなく、何とか今日は乗り切れるのかそう思いながら皇帝をみる。そのとき何故か、本当にわからないのだけれど、その背中が酷く寂しげに思えた。 だからといって声をかけられるわけでもないし、寂しいはずが無いのだ。欲しいものは土地でも物でも、それこそ人でも何でも手に入るのだ。 レオニードがこの国に嫁ぐ件だって気に入らなければこの姫が欲しいと名指しすれば恐らく手に入る。そんな男が寂しいはずが無いのに何故かそんな風に見えた。 そのまま、レオニードは謁見のための控えの間に待機しているように言われた。 後にして思えばそれはおかしなことなのだけれど、それがレオニードを排除しようとしたものだったとしても、あの出会いを作ってくれたのだから感謝したい。それは運命のいたずらなんていう簡単なものだったのかも知れないし、そうではないのかも知れない。 それでも後から考えるとそのいたずらに感謝したい気持ちしかレオニードにはなかった。

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