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パンダと茄子とクリスマス 3

「鍵が見つからないんですか?」 「いや、たしか入れたはず……あった」  わざとらしく取り出してロックを解除すると、私は努めてさり気なく「寄って行くかい?」と訊いた。鍵を握る掌がビッショリと汗をかいている。  あがってもいいんですかと、結城は嬉しそうに頷いた。 「お邪魔しまーす。わあ、さっすが几帳面な先生の部屋ですね。きちんと片づいていて、モデルルームみたいだ」  2DKのマンションの内部はモノトーンのカーテンにカーペットと、それに見合うシンプルな家具を配置。結城の言うとおり、モデルルームとして通用しそうなレイアウトにしてある。 もちろん、いつでもどこでも緑が眺められるようにと、グリーンインテリアとしての観葉植物をいたるところに置いたため、プチ・ジャングルと化している場所もあった。 「植木鉢の数がスゴイですね、園芸店並みですよ。これ、手入れするだけでも大変じゃないですか」  そう見えるだろうが、これらの世話は他人が思うほど面倒ではない。観葉植物は丈夫なものが多く、水やりや施肥、冬季の保温の仕方など、基本的な手入れさえ怠らなければ長持ちするのだ。  しかし、残業の多いサラリーマンで妻子がある者だったら、これほどの数をこなすのはちと難しいかもしれない。  クソ真面目な偏屈者の唯一の趣味──

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