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パンダと茄子とクリスマス 5

「オヤジギャグのレベルだね」 「きっついお言葉ですねぇ」  テーブルに付属の椅子に腰掛け、向かい合わせに座った結城のコメントを聞きながら、私はある言葉を思い返していた。 『ほら、こいつの説明が載ってるよ。パンダナスの葉は細くて堅く、ふちがトゲ状になっているので注意、だって。細身で堅物で、言葉にトゲのあるおまえみたいだな』  観葉植物の育て方マニュアルを片手に、シャレにもならない冗談を言いつつも優しく微笑む、そんなところも好きだった…… 「どうかしました?」 「い、いや、別に」  探るような目でこちらを見た結城は「ナオヒコさんのことを考えていましたね」と看破した。 「だから違う……」 「もしかしてこのパンダナス、彼のプレゼントだとか。ますます妬けるなぁ、何で連絡しなかったんですか」  明るく軽い口調ながらも、尚彦の存在を相当気にしているのだろうと思い、そろそろ本当のことを教えてやった方がいいのかと、私は事実を切り出すタイミングを窺っていた。  だが、それを気にしすぎるあまり、気もそぞろになってカップをひっくり返し、せっかく淹れてくれた紅茶を辺りにぶち撒けてしまった。 「大丈夫? 火傷しませんでしたか?」 「あ、す、すまない」  テーブルを布巾で拭きながら、先生って見た目よりおっちょこちょいですねと言って、結城は笑った。

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