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パンダと茄子とクリスマス 6

「階段から落ちたり、飲み物こぼしたり。子供の頃、落ち着きがないって注意されませんでしたか? 俺も小学校のときの担任に『席に座っていなさい』って、しょっちゅう怒られてましたけど」 「……失礼な。キミと一緒にされたくはないね」 「怒っちゃいましたか」  その表現を気にするふうでもないところはさすがマイペース男、結城はニヤニヤしながら「この前の講義ですけど」と話題を変え、私は尚彦の一件を言いそびれてしまった。 「葉の色素と形状の遺伝の話から、ポインセチアを例に取り上げましたよね。あれ、すごく面白かったな」  クリスマスを彩るお馴染みのポインセチアは観葉植物の仲間である。実際の花は小さくて地味なもので、真っ赤に色づく派手なあの部分は苞葉と呼ばれる。 「それは火曜日の二限に行なった講義のネタだね」 「ええ。最近は品種改良が進んで、色は赤だけでなく白やピンク、斑入りのものなんかも出てきたってのと、苞葉の形状も縮れたものとか、バラエティに富んできた……」 「たしかにそんな内容だった。さほど面白い話をしたおぼえはないのだが、何がウケたのかな」 「そのあと、話が脱線したじゃないですか」 「脱線?」 「有名な文献の一文に『クリスマスを過ぎたポインセチアは一セントの価値もない』って紹介しましたよね、あれが印象に残ったんですよ」 「ああ、そういえば」

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