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パンダと茄子とクリスマス 7

「一セントの価値もないって、身も蓋もないっつーか、それじゃあ、あまりにもポインセチアが可哀想だなって思って」  そこらはさらりと流しただけで、すぐに次の題目に移ったのだが、妙なことを気にする男だ。 「だが実際、街の園芸店やホームセンターではクリスマスを過ぎるどころか、当日前に叩き売りを行なっているのを何度も目撃している。現実はそんなもんだ」  そう冷淡に答えると、彼は「今、思いついたんですが」と提案してきた。 「何を?」 「いや、ポインセチアに青い色があったらどうかなって。造花バージョンでは売られていましたけど、本物でも青の苞葉のやつを創り出すんですよ。青い色のバラの研究開発が進んでいるでしょう? せっかく植物遺伝学を専攻してるんだし、そういう研究ならやってみたいな、なんて」 「青いポインセチアを創ってどうするの?」 「青っていうか水色に近い感じにすれば涼しげだし、クリスマス限定にしなくても、夏でも売れそうだからですよ。あの赤と緑の対比がいかにもクリスマスなわけだし」 「なるほどね。だが、消費者は果たして青イコール夏と捉えてくれるだろうか。クリスマスに青い造花が出回っているということは冬でも青が通用しているからで、何色であってもポインセチアはクリスマスのものと考えられてしまうんじゃないかな」 「そっかー。我ながらいい考えだと思ったんだけど」

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