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パンダと茄子とクリスマス 8

 結城とこんなふうに植物談義ができるとは思ってもみなかった。なかなか楽しいじゃないかと、ノッてきた私はポインセチアネタを続けた。 「現に私は生花の青いポインセチアを見ている。去年の十一月頃、スーパーの園芸コーナーで売っていた。最初に見たときはさすがに驚いたよ」 「えっ、もう青の苞葉が開発されてたんですか?」 「いや、白というか、あれはアイボリーに近い色だが、その苞葉に青いインクを吹き付けて着色したものだ。青インクを吸わせるカーネーションと同じ考え方だね。だから本物の青ではないし、青い苞葉に対する需要が見込まれるのはたしかだけど、夏と結びつくかは即断できないね」  興味深そうに頷く彼の瞳が輝いている。植物遺伝学を面白い、楽しいと思っているのが強く感じられて嬉しくなった。 「それにポインセチアは短日植物だから、夏場は緑一色であり、苞葉が色づくのは十一月から十二月。だからクリスマスの花でもあるわけだが、そいつをどうやって夏の前に持っていくか。栽培する側が上手く処理したとしても、店頭や消費者の手元に渡ったときに色が変わってしまっては困るよね。これはやりがいもあるけど、かなり大変な研究になると予想されるな」 「大変な研究、かぁ。でも、却ってわくわくしますよ。トライしてみたいな」 「さすが、何事にもメゲない性分だね」  クリスマスの話題を続けたせいか、私の頭の中はクリスマスモードになっていた。

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