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パンダと茄子とクリスマス 19

 さっきの言い争いが尾を引いているのか、それともあと一歩というところで、二人きりの時間を邪魔されたと思っているのだろうか。だが、私の脚がこの状態な限り、無理はできないのだから仕方ないではないか。  私としては気まずい雰囲気が解消になって痛し痒し。何より松下たちの気持ちが嬉しかった。こんなふうに私を慕ってくれる学生のいる学年は今までなかったと思う。 「とにかく、先生の怪我がひどくなくて良かったよなぁ、大」  松下に背中をバシバシ叩かれると、結城は「ああ」と気のない返事をした。 「あのさ、おまえ、少しは責任感じろよ」 「俺が?」  何のことだと問う結城の視線を遮るように、芝がその場を取り繕った。 「まあまあ。それよりせっかくだから、退院のお祝いをやりましょうよ」 「賛成。オレ、何か買ってこようか」 「それなら私が主催しよう。快気祝いだと思ってくれ」 「えっ、先生の奢り?」 「やった、ラッキー」  私は近所の寿司屋に出前を頼もうと電話をかけたが、臨時定休らしく通じない。  他をあたろうかと思案していると、松下の携帯電話から着信音が流れ始めた。 「はい、もしもーし。おおっ、比丘田か! どうした、えっ、退院した? そっか、そいつは良かった、おめでとう。でさ、じつは羽鳥先生も……」

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