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パンダと茄子とクリスマス 20
比丘田というのは交通事故で入院していた六人目の三回生であるが、数日前に退院して月曜から登校するという話で、それを聞いた仲間たちは彼と私、二人合わせての退院祝いにしようと言い出した。
友人との久しぶりの飲み会とあって、比丘田自身も異存はないどころか大いに乗り気で、話はとんとん拍子に進んだ。
「……お薦めの店って、それ何処だよ? 横浜にあるの?」
主賓の一人である比丘田の推薦、というか希望により、会場は横浜のダイニングバーに決定したようだ。
松下との会話に聞き耳を立てながらも、あとの連中はめいめいに勝手な話を始めた。
「あいつの家、横浜だっけな。ダイニングバーなんて、こじゃれてるよな」
「へえ、いつもそんな店で飲んでるのかよ。自宅生は優雅でいいよなぁ」
「なあ、それ、どういうところ? オレら、居酒屋しか行ったことねえじゃん。それも超安い店」
「うわ、ダッサい」
「人のこと言えるかよ、こら」
「ねえ、四年生はどうするの? 声掛けなきゃいけないのかな」
「えー、面倒臭いなぁ。先生、四年生も誘った方がいいですか?」
「急な話だし、今回はここだけでいいんじゃないかな」
「そうっスよね、良かった。あ、でも先生は出掛けて大丈夫ですか? あんまり脚に負担をかけちゃマズイとか」
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