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⑥
「おぉ、クッキーか。甘い物に目がない俺の為に!」
「あ゙ッ?つーか離れろテメェッ。あ、おいッだから…」
「ん、‥薄味だが、美味いな!」
俺の呼び止めも右から左への乃木
素早い動きで袋を開け、早くも口にクッキーをほうり込んでいる
美味い美味いと舌鼓を打つ乃木に堪らず
「おい‥」
声を掛けていた
「なんだ、神谷?お前も食べるか?」
「い、いや‥‥つーか美味いか?それ‥‥」
「ああ、美味い。それに神谷、お前がくれた物だしな」
(ッ!!!)
コイツは、そんな事をさらりと言われると
こ、こっちが照れるだろーがッ
チラッと顔を盗み見れば
優しい眼差しで微笑む乃木に、不覚にも心臓が痛いぐらい打ち付ける
「ありがとうな、神谷」
「ッ、ツ!!!」
だから
んな事言われると言いづれぇだろーが…
「チッ‥‥‥乃木?」
「ん?」
「それ……き、キャットフードだぞ‥‥」
「ん?」
「茶太郎に買って来たおやつで、猫用のクッキー‥‥」
シーン‥と、部屋に静けさが漂う
「ハハハッ神谷、そっちはツンの方だ!
俺が好きなのはデレの方なんだが?」
「は!?な、なに言ってんだテメェ!?」
「だから、神谷お前は俺にデレデレに甘えていいと言ってるんだ」
「‥れがっするかボケがぐぉらァアアアッ!
つーか、いつまで抱きついていやがる退けやァアアアッ!」
「ハハハっ神谷、顔真っ赤だぞ!照れるな、照れるな!」
このド天然には日本語の壁は高すぎたらしい
次の日、腹を下した様子もなく体に異常も無い乃木を見て、頭だけでなく体もイカれてるなと震え上がったのは言うまでもない
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