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コールドケース 1 真田 岳人

『…………新しいニュースです。 昨日の〇月‪✕‬日、○○県の××町で同町内に 住む6歳の男の子が行方不明になりました。 男の子は同町内に住む真田岳斗(さなだ がくと)くんで両親と買い物中にトイレに行くと言ったまま行方がわからなくなっております……』 寝起きでテレビをつけた時に流れてきたニュースに、男は「くぁ〜」とあくびを噛み殺しながら、横目にそのニュースを見つめる。 テレビに映るその顔写真は幼い笑顔は隣で眠る 男の子そのままだった。 言葉巧みに車に乗せた男の子を連れ去り、 200キロほど離れた場所のホテルに宿泊している。 起きたら、また、別の場所に移動して、 依頼主に子供を渡せば、俺の任務は完了だ。 起きてきた「岳人」を風呂に入れ、 目的地付近で説得してキャリー型トランクに 入ってもらう。それまでは車の後部座席で 横になってもらっていた。 そして車で起き上がらないことを条件に トランクの蓋を開け、話をしながら目的地へ 向かう。 「ケントは一緒に行かないの?」 ソプラノの声で問われるが、 「頼まれただけなんだ。また、 会おう」 「うん。約束だからね!!」 嬉しそうに微笑む岳人に申し訳なさを感じつつ、もう二度と会うことは無いだろう、と 心では思っている。 港に到着すると、トランクごと依頼主に 岳人を引き渡す。 「船に入ったら、出してやるからな」 と下卑た嗤いを浮かべた男は中年の 腹の出た男だった。 交換に現金の入ったジュラルミンケースを 渡される。 この男がこの子をどうするのかは 知らされていない。 ハイリスクハイリターンな仕事だけに 当面の生活費はもつ。 それほどの金額はもらった。 可愛かった岳人は、そのまま船に乗せられて、 どこかに向かってしまった。 もう二度と会うことも無いだろう…… そして、オレはその港を後にした。

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