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現(うつつ)-2

何がどうなっているのか優斗には全く分からなくて、慌ただしくなっていく周りをぼんやりと見ているしかなかった。 (何で病院にいるんだろう?怪我した?病気になった?あれ?俺ってどうしたんだっけ?何か大切な?……何?) 『かあさん……?』 一体どうなったか、母親に聞かないと思って、優斗は話しかけた。だけど、母親は、一瞬、優斗を見ながら不思議そうにしていた。 「何?何か言ったの?」 『かあさんって言ったんだよ?』 「何?」 (あれ?これは、言葉が通じない?どういうこと?) でも優斗には母親が何を言っているかは分かっていた。だから、それをそのまま声を出して言えばいいことなのにそれが出来ない。 暫くして医者がやってきて、色々と優斗に問診をしていく。相変わらず優斗の言葉は通じない。優斗はジャスチャーで意思表示をするしかなかった。 医者が言うには何等かの原因で失語症的なものになっていると言われた。もしかしたら何等かの脳へダメージがあったのかもしれないと。特に異常はなかったようだったけれども、もっと詳しい検査をしないと何とも言えないと言われた。 少し落ち着いた所で優斗は皆の言っている事をまとめて今の自分の状況を考えてみた。 どうやら自分は、学校付近の路地で学校の鞄とかを残して何処かへ消えていたらしい。で、見つかったのは半月経ってからで、同じ場所で倒れていたという。それから、今日まで一週間ぐらいずっと目を覚まさなかったらしく、その間に色々検査してもらっても特に目立った異常はなかった……といった事なようだった。 (それに……言葉が通じないってどういう事?) 優斗が目を覚ましたので明日からはもっと詳しく検査をすると医者が言っていた。 (なんでずっと行方不明だったんだろう?何か事故に会ったのかな?それとも誘拐されてた……とか?) .

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