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現(うつつ)-4

…… …… 病院での夕食はすごく早い。優斗に出された食事はお粥なようなものだったけれども、優斗はなんだかお米を久しぶりに食べたような気がした。 そして、その夜。 まだ深夜には程遠い時間。病院は早くに消灯になる。その後に、手元灯とかを点けて本などを読んでいても特に問題はないようだったが、とりあえず病室の電気は消される。 優斗の病室には他にもう一人いたがその人は、老人で消灯後はすぐに寝てしまっていたようだった。 優斗はなかなか寝付けずにいて、ベッド脇にあるテレビもイヤホンなどをして音を外に出さないようにしてなら見ることもできたが、見る気にもならないし、そういえばスマホとかもどうしたのかも分からなかった。だから、気晴らしに病室の窓のほうへそっと歩いて見て見た。 窓の外を見ると、意外にこの病室が高い所にあることに気が付いた。ここは何階の病室なんだろうか?少なくとも低くはない。だけど高くもない。目の前には高層のビルがあった。高層ビルにありがちだけど、遠くで見るとビルが隙間なく立っているようだけれども、近くでいれば建物の間はとても空いている。だからなのか・・・。空は見える。 (今日は月が出てるのか?) 都会だから月は見えるけれども、星は見ることが出来る星座もだいたい決まっている。月が真上に来ると窓を開けないと見えなくなってしまう。病室の窓は大きくは開かない。でも今はこの部屋でも見える高さの月だった。 (半分の月。まっぷたつのやつだ。あれなんていうんだっけ?上弦?下弦?の月?) .

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