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現(うつつ)-5

──月・・。 ───満月の月。 "満月?" ──ああ、月の光……を浴びないと…… 優斗は外へ行かないといけない気がして、無意識に病室を出た。廊下を静かに歩いてナースステーションの前を通って・・だけど、誰にも咎められなかったし誰にも会わなかった……。 優斗はそのまま、エレベーターへ乗って上へと行く。 屋上には病院の屋上庭園がある。 屋上へのドアは閉まっておらず、優斗は静かに庭園へ行く。そこは綺麗に整えられた緑の木と花壇が植えられて入院患者や病院にいる人々の憩いの場になっていた。もちろん間違っても落ちてはいけないようにしっかりと周囲には高い柵があった。 周りにビルが見えたが、それも庭園の造りでそんなに気にならないようになっている。 空が綺麗だった。 雲一つない夜空。 正面にある高層ビルとビルの間の上の空から下弦の月が見えた。ちょうど今、優斗がいる場所から真正面だった。 「……見えた……よかった・・・」 その月の光は誰の邪魔もなく優斗へとまっすぐに行く。 と… 優斗がいきなり咳込み始めた。ゴホゴホと何度も何度も咳が出て止まらない。 "苦し・・" どうにか止めようとしたが、何度も咳込んだせいか癖になったように咳が出続ける。そして、何度目かの後、なぜか水を吐きだして優斗はその場で倒れこんでそのまま意識を失った。 と、その時、優斗の頭で誰かの声が響く。 それは、優斗を呼ぶ声だった。 ……… … .

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