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プロローグ

 思えば後悔は沢山ある。  俺はいつも、少し妥協してしまう。  まあこんなもんでいいだろ、と自分にとても甘い。  小中高と、勉強も部活も、なんだって中途半端だった。今やらなくていいのなら、ギリギリまでやらない。そんな人間だった。  決定的なのは、第一志望の大学に落ちたことか。敗因は、明日やろう明日やろうという、己の軟弱な精神だ。結果一歩及ばず。  でも人生において、たった四年過ごすだけの大学なんて、どこに行っても同じだろうと思った。これも、俺という人間のダメなところだった。  第二志望の大学に入って一年と少したった頃、自分が世間で言うところのゲイだということに気付いた。  いつも適当に参加するサークル主催の合コンで、女よりも男を目で追っていると、友人に指摘されたからだった。  なるほどだから、俺は今まで女子と付き合いたいと思ったことがなかったんだと、妙に納得した。納得して、「じゃあ俺なんてどう?」という、友人の口車に乗せられて、あれよあれよと言う間にホテルまで行った。  でもなにもできなかった。  友人はいい奴だった。今日できなくてもいいよと言ってくれた。初めての俺を気遣って、笑顔で。  その友人は今でもいい友人で、時々ホテルに誘ってくれるけど、俺は未だに童貞処女のままだ。  単純に怖くなって逃げ出した。別に、今じゃなくたって、この先ちゃんと気持ちの通じる相手とする、なんてこともあるだろうし、だからこそ、ただの友人以上にならない相手と初めてをしなくてもいいだろう、と思っていた。  あ、ここは俺の唯一妥協しなかったところかもしれない。ホテルまでついていって何だけど。  何が言いたいかって言うと、俺は妥協と甘えの詰まったダメな人間で、適当に選んだ第二希望の大学に愛着もなく、この歳にもなって恋愛にも興味がなく、微妙な関係の友人と実りのない合コンに参加して。  あー、適当な人生だなあ、と時々寝る前に虚しくなる。  このまま年老いていくのか。妥協ばかりする自分に甘い俺は、きっとこの先も何もないまま過ぎていくんだ。  そりゃまあ、セックスくらいはしたいけど。  別に、今じゃなくてもいいし。本当に切羽詰まったら、あの友人でもいいや。  なんて、日々惰性的に生きていた。  後悔なんてない。いつも俺としては全力を出していた。いや、本当は自分の全力がわからなかった。でもそれでもいい。今までそうやって生きてきたから。そう本気で思っていたつもりだった。  だけどそんな俺に、天罰が降ったらしかった。

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