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偽りの窓の外 16
行為が終わり、さっさと身支度を整えて帰ろうとすれば、マサルが「そりゃないだろ」と笑った。
「俺が来たいときに来て帰りたいときに帰るって約束だ」
「それはわかってるよ? でも、昨日の今日じゃん。期待するじゃん?」
マサルは頬を膨らませるようにして俺を見て、クスクスと笑う。
「期待って何をだよ」
「少しはオレのこと好きになってくれたのかなーみたいな」
「な、わけあるか」
「冷たい奴だな」
そう言いながらマサルは相変わらずケラケラと笑いながら、タバコに手を伸ばした。
「でもさ、今日はえらく急だったよね」
「いつもそうだろ」
「いつもより急だったな。だってさ、電話出て『俺』しか言わないんだぜ? 詐欺かと思うじゃん」
そして玄関に立っている俺に近付き、少し身を屈めながら俺の顔を覗き込んで、ニヤリと笑った。
「何かあったの? いつもより思い詰めた顔をしてるかと思えば、今日はいつもよりやけに感度がよかったから」
「別に。感度いい方がお前も楽しめるだろ」
「そりゃね。でも、オレはそれよりキスしたいけどね」
「誰がお前なんかと」
「じゃあ、誰だったらいいんだよ?」
マサルはいつものように軽い口調でまた声を出して笑った。
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