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温もりが欲しいとか言えない 12
「ずっと待ってたからさ。意外と一途だろ?」
そう言いながら賢は柔らかく笑うだけで、そんな風に言われたことなんかないからむず痒くて気まずい。
ここで口論をしていても埒が明かないので、駅に向かうことになり、その間も賢は何かしゃべっていたが返事をしないまま、ただ歩いていた。
一人で話してるだけなのに、賢が何故か少し嬉しそうなのもこそばゆくて早く駅に行こうと少し早足になった。
駅近くの開けた場所に出れば、この時間でも車も人通りもわりと多くて賑やかだ。
そんな、車が行き交う大通りを渡るため信号待ちをしていたとき、賢がふいに声をあげた。
「あれ、千葉くんじゃないの?」
和臣の名前に反応して顔をあげたら、道向かいの深夜まで営業しているカフェの前で和臣が手を振っていた。
「千葉くんって、さっき朋ちゃんたちと二次会行くっていってたよね?」
和臣の視線の先からは、ふわふわとしたピンクのワンピースを身につけたロングヘアーの女性が駆け寄っていた。
そして自然に和臣と店の中に入っていく。
「……きっと、用事ができたんだろ」
「彼女かな? 聞いてきてあげようか?」
「違うだろ」
そう口にしたものの、それはただの願望でしかない。
和臣の表情はあまり見えなかったが、女性はとても嬉しそうに見えたからだ。
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