すると賢が静かに言った。 「陽斗。また俺にアイツを重ねて抱かれるか？」 「うるさい！」 さほど煩く言われたわけではないのに語気が強まったのは、見抜かれて追いつめられたような気になったからだった。 「陽斗はさ、アイツの前でもこうやって怒ったりするの？」 「するわけないだろ。お前みたいに余計なことしないんだから」 「それだけか？」 「……？ どういう意味だ」 何を言われているのかわからず、首をかしげると、賢は切なげに俺を見つめた。 「陽斗は彼に嫌われたくないんだろ？ だから、都合よく振る舞ってるように見えた。そんなんじゃ辛いだけだろ」 固く閉ざした心の中心を射抜かれた気分だった。 「……賢に何がわかるんだよ」 「わからないよ。陽斗の気持ちなんて陽斗にしかわからない。だから辛いなら辛いって言えばいい」 「……そんな簡単なことじゃない」 「何気ない言葉に一喜一憂したり、違うとわかってても思わせ振りに感じる言葉に振り回されたりするのは辛くないか？」 「…………」 そりゃ辛いよ……。 何も言い返せない代わりに、思わず心の中で呟いてしまった。