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残酷さえも手放せない 2
「うん、先生に学会発表のデータ処理頼まれてて。和臣は勉強か?」
「カンファレンス見学してたんだけどさ、なんか白熱してて、こんな時間になった。早くシャワー浴びて寝たいけど、家が遠いんだよなぁ……」
そういえば学生寮であるアパートは安いそうだが病院から少し離れた場所にあった。
じゃあな。と力なく笑い手を振りながら歩いていく後ろ姿にはさすがに疲れが見えていて……。
日々が激務なんだろう。
いつも以上に疲れた顔をしている和臣を放っておけるわけもなく。
「俺んち近いけど来る? 明日も早いだろ。泊まれば?」
追いかけて引き留めれば、申し訳ないからと断りつつも、和臣の表情は少しだけ明るんでいた。
だから、もう一度誘ってみると。
「ありがとう。すっげー嬉しいけど、いいの?」
くったくなく笑う和臣は、ほっとしたような顔もしていて早く寝られることが何より嬉しそうだ。
「気にせず早く風呂入って寝ろ」
ポリクリは体力勝負とも聞いている。
外科のオペ見学なんて何時間も立ちっぱなしだと聞いたこともあった。
とりあえず和臣を早く寝させなければとマンションへ急いだ。
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