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儚く溺れる 21
「ふ、二人は付き合ってるのか?」
弱々しく和臣が尋ねると賢は飄々と答える。
「いいや。今のとこは只のセフレだよ。陽斗が付き合うって言ってくれないからね」
「賢、やめてくれ……」
力なく言う俺の声が二人に届く前に、賢の発言により和臣は怒りを露わにした。
「セフレってなんだよ!? 陽斗を弄んでいたりするのか! そんなの!」
和臣が声を荒げたところなど初めて見た俺は驚きで固まってしまったが、落ち着いた様子の賢は顔色一つ変えずそれを制止する。
「こういう関係を望んでいるのは陽斗の方だよ」
「陽斗はそんないい加減なやつじゃない」
「いい加減になったのは、誰のせいだと思ってるの?」
「どういう意味だよ」
意味深に微笑む賢に対して和臣は理解していないようだった。
「……やめろ。本当にやめてくれ」
これ以上、和臣に知られたくない。
取り繕っていたものがバラバラと剥がれ落ちていくのを止めたいのに止められない。
二人の会話を遮ることが今の俺には難しかった。
「陽斗はいつまでもこじらせた初恋が忘れられなくて先に進めない。絶望してオレにその相手を重ねて寂しさを紛らわしてる」
「それが俺と関係あるのか?」
「鈍いよね。ほんと、鈍い。はっきり陽斗に言ってあげたら? 男には興味ないってさ。そしたら陽斗は解放される」
それを聞いて和臣の動きが止まった。
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