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儚く溺れる 20
「か、かず……おみ、な……なんで……」
絞り出した声では言葉になんかならなかった。
男と二人でラブホテルに入ろうとしていたところを見られては、言い訳できない。
和臣は青ざめる俺を見て焦ったように言った。
「同級生と、め、飯食って帰ろうって、なって……あの、……」
和臣も言葉がうまく繋がらないのか、拳を握りしめながら言葉を紡いでいく。
「…あ、陽斗と河北さん見かけたから…追いかけて、来て………」
たどたどしい言い方だったが、状況を理解しているからこんなに動揺しているんだろう。
──終わったと思った。
和臣に返す言葉もなく、ただ呆然としている俺の代わりに、返事をしたのは賢だった。
「野暮だよね。普通ここで声かけるかな?」
余りにも堂々と放たれた言葉に、たどたどしくこたえる和臣の声は弱々しい。
「いや、……あの、な…に…してたのか……って……」
「本気で聞いてる? ホテルでやることったら一つじゃん」
「で、でも……」
「オレたちゲイだし」
「ま、賢!」
賢の淡々としたカミングアウトにより、和臣はより戸惑った表情を見せた。
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