120 / 250
儚く溺れる 19
結局、俺は本心では和臣に全て隠したいと思っているわけだ。
自分を知って欲しいと思う気持ちを持ちながらも、軽蔑されるのは怖い。
親友でいるのは辛いが、友達ですらいられないのはもっと辛い。
どこまでも矛盾だらけで考えれば考えるほど頭が痛くなってくる。
「なんか色々考えるのが面倒になった」
「オレに全部任せればいいのに」
「それは嫌だ」
「強情だな」
例え、全てを見透かされたようで居心地が悪くても、賢には虚勢をはってでも優位に立っておきたいと思う。
無意味なプライドかもしれないけれど。
すっと息を吸うと真っ直ぐ賢に視線を向けた。
「来いよ。抱かせてやる」
「気の強いお姫様だね」
賢はクスクスと笑った。
そして二人でラブホテルに入ろうとしたときのことだ。
物音が聞こえた。
そして何気なく俺と賢が振り返ると……。
人影が視界に入り、その人物を認識したとき、周りの雑音が消えたかのように何も聞こえなくなった。
そして血の気が引いて体温が急激にさがっていくのがわかる。
次第に俺の心臓の音だけが耳から頭に響いてくる。
ごくりと唾を飲み込むのが精一杯で、思考回路は停止し、俺は呆然と立ち尽くすことしかできない。
「あ、きと…………?」
そこには和臣が立っていた。
ともだちにシェアしよう!