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儚く溺れる 18

相手に心まで明け渡すことはせず、空想を投影することで隙間を埋めた気になっても、結果的にいつも暗い気持ちになるくせに。 でも、結局はそんな関係の方が楽だと思っている自分もいる。 やっぱり和臣以外を好きになるなんて想像もつかないから、結局は誰が相手でも同じに感じてしまうからだ。 俯いた俺の頬に賢が触れた。 「まだ踏ん切りはつかないか?」 「……つけなきゃだめなのか」 「少しくらい大目にみるけどね」 踏ん切りってどうやったらつくんだろう。 自分から離れたとき、心はいつまでも縛られたままで辛くてたまらなかった。 先の見えないトンネルはまだまだ続いたままだ。 だったら、和臣に嫌われるような、そんな決定的な出来事があれば、…───何か、変わるのだろうか。 和臣に拒絶されるような出来事でもあれば……。 そこまで思って、またかぶりを振った。 そんなことまで他人任せなのかと、自分が情けなくなる。 それに、そんな状況になったら、きっと狼狽えるだけだろうに……。 和臣だけには、やっぱり何も知られたくないと思うからだ。

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