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儚く溺れる 17
どうせヤることをヤるだけの関係の癖に、賢は少し寂しそうな声を出す。
「陽斗、泣きそうな顔してる」
「してない!」
「そんなに好きなの? アイツがずっと」
即物的な関係のくせに、和臣のことを少しでも思い出させるのはやめてほしい。
「関係ないだろ! お前はヤれればいいんだから」
「据え膳はありがたく頂く主義だからヤらせてもらうけどさ、オレは陽斗の心も欲しいんだよ。キスしてセックスしたいし」
「言っただろ。キスは……しない」
周りに不審に思われない程度の口喧嘩をしながら繁華街の少し外れにあるラブホテルの前まで来て、俺が黙り混むと賢がそっと頭を撫でた。
「わかってるよ。そういう約束だもんな。でも、オレは言ったよね? アイツを忘れなくてもいいから心を開いてほしいって。オレだってお前にいつも苛々してるよ。いつになったらオレのものになるのかなってさ」
「俺はものじゃない」
苛々する。それは、自分にだ。
いつまでもどうにもならない関係に、それでもいいんだと純情ぶって思っていたくせに、ぽっかり空いた心の隙間をいつも何かで埋めようとしている。
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