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儚く溺れる 16

どうしようもない虚しさは心に根をはり俺を侵食していく。 守りたい想いは、黒い闇に覆われて今にも潰れてしまいそうだ。 ただですらぐらついているのに、賢と話していると妙に現実的な自分が強くなって心が壊れてしまいそうになる。 きっと、俺は和臣に理想を見ているんだ。 親友として和臣のそばにいて、和臣の幸せを見届け、受け入れる自分を。 そうでありたいと思うし、そうでなければとも思っている。 でも、賢の前では浮き沈みしている感情を見透かされている気がして、自分の心の矛盾が剥き出しになってしまう。 その度に、俺の理想なんて陳腐なものだと感じ、孤独感に押し潰されそうになるんだ。 そんな息も出来なくなるほどの気持ちなんて…─── なくなってしまえば楽なのに。 ため息をついた瞬間、どこかで張り詰めた糸が切れるような感覚がおそった。 剥き出しになった矛盾に耐えられなくなってしまったのは俺の気持ちの方のようで。 もう、どうにでもなればいいとすら思ってしまう。 「……そんなヤリたいなら店、移動しようぜ」 もうヤケに近いような気持ちで、半ば強引に会計を済まし、賢の手を引いて店を出た。

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