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儚く溺れる 15

すると賢はグラスを傾け中の氷をカラカラと音をたてるように揺らした。 「こないだの女性のことは聞いた?」 「は?」 「こないだ千葉くんと会ってた人のことだよ。誰なのか聞いたの?」 頬杖をつきながら覗きこむような素振りをしたので、咄嗟に表情を隠すため視線をそらす。 「わざわざ聞く話でもないだろ」 「じゃあ、オレが聞いてやろうか? 彼女ですか? って」 「余計なことすんな」 言葉を強めてもクスクス笑うだけの賢に、また苛々する。 何か含むような視線にも全てを見透かされているような気がして居心地が悪くなる。 「何か言いたいことあるなら言えよ」 「陽斗は早急すぎるよ。せっかくのデートなのに」 「何がデートだ」 「いつも会ってヤってるだけだったからたまにはデートしたいなぁって思ったんだよ。まぁ、もうヤってくれるのかもわかんないけどね」 相変わらず飄々として、軽く笑いながら言う賢に苛立ちは最高潮に達した。 「そんなのいらねーよ。どうせ俺らの関係なんてヤるだけじゃん」 「でも、これがカズオミなら喜んでデートするんだろうね。健気だよね」 「和臣の話をするな!」 思わず語気を強めたのは、また心を読まれたようで怖かったからだ。

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