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儚く溺れる 14
そんな俺には、やはり天罰が下る───…。
ある週末。
職員が利用する出口の扉を開けると、目の前にスーツ姿の賢が立っていた。
「医者はこっから出てこないぞ」
冷たくあしらうようにしても賢は相変わらず飄々としている。
「待ってたのは陽斗だから。つか、遅いよ」
「お前が勝手に待ってたんだろ」
「全然返事くれないからだろ? だから待ち伏せしたんだよ」
話がしたいという賢の提案で少し離れたバーに連れていかれた。
そこはいつも行くような賑やかなバーではなく落ち着いた雰囲気の店だった。
内心こんな店に連れてこられて、どんな話をされるのだろうと身構えていたのだが。
賢はいつも話しているような何気ない自分の日常や近況の話ばかりしていて少し拍子抜けしてしまう。
何か目的があったわけではなかったのかと軽くため息をつくと、賢はにっこり笑いながら俺の顔を覗き込み脈略なく言った。
「で、オレと付き合ってくれる気になった?」
「……は? ならない」
「即答? 冷たいな」
酒を飲みながらうだうだ実のない話をしているのは賢なのに、まるで俺が悪いような口振りだ。
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